欧米各国の首脳がソチ五輪の開会式を欠席するなか、安倍首相は開会式に出席し、プーチン氏は安倍氏を厚遇した。秋に予定されているプーチン氏訪日に向けて北方領土問題の進展が期待されるが、領土問題解決はあるのだろうか? 作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。
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2月8日、ロシアのソチで安倍晋三首相とプーチン大統領が会談した。会談の冒頭、マスメディアの前でプーチン大統領は、一昨年、秋田県知事が贈った秋田犬の「ユメ」を連れて現われた。これはプーチン大統領が日本に対する好感を持っていることを報道させるための演出だ。
安倍首相とプーチン大統領の会談は、14時10分から約1時間、少人数で行なわれ、その後は車で移動し、15時25分頃から16時30分頃まで昼食会が行なわれた(時間はすべて現地時間、日本時間はプラス5時間)。
ソチ冬季五輪にあわせて行なわれた非公式首脳会談に2時間以上もプーチンが時間を割いたのは異例のことだ。前号で解説した通り米国、英国、ドイツ、フランスなど西側主要国の首脳が、同性愛宣伝禁止法などロシアにおける人権問題に対する懸念からオリンピック開会式を欠席した。そうした中で安倍首相が出席したことをプーチン大統領が高く評価していることを可視化するためにこのような厚遇をしたのだ。
会談の実質的な成果もあった。今後の政治対話についてはまず、今秋のプーチン大統領の公式訪日に合意した。ロシア大統領府筋によれば、訪日は10月か11月に行なわれる。それに加え、安倍首相が、6月にソチで行なわれるG8サミットにおける日露首脳会談を提案したところ、プーチン大統領は「検討する」と答えた。
その後、外交ルートで調整が行なわれ、2月10日の記者会見で菅義偉内閣官房長官が、首脳会談が実現されると発表した。これで本年中に日露首脳会談が少なくとも3回行なわれることが確実になり、日露の戦略的提携が進んでいることを国際社会に示すことになる。