世の中には、アンチエイジング(抗加齢療法、抗老化療法)に関するさまざまな説や実践法があふれているが、なかにはまったく正反対の主張が存在する。たとえば、「食事は1日1食がいい」という説もあれば、「3食とらないと生体のリズムが狂う」とする説もある。
一体、どちらが理想的な食事回数なのか。『アンチエイジング・バトル最終決着』(朝日新書)という話題書を上梓した坪田一男・慶應義塾大学医学部教授(日本抗加齢医学会の理事長)の最新の考えを見ていこう。
近年、南雲吉則医師の『「空腹」が人を健康にする』という著書などの影響で、1日1食の健康法が大ブームとなった。
空腹でお腹がグーッと鳴ったとき、成長ホルモン(若返りホルモン)の分泌が促され、内臓脂肪が燃焼されている。
さらに、空腹はサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子とも呼ばれ、飢餓やカロリー制限によって活性化し、老化の予防をもたらす)を活性化させ、体内の傷ついた細胞の遺伝子を修復してくれる。よって、空腹で人の体が若返るというものだ。
だが、一方では「3食しっかり食べないとダメ」という考え方も根強い。
脳を十分に働かせるには、1日3回、適量のブドウ糖を補給する必要がある。また、食事回数を減らすと栄養分が偏りがちになり、朝食をとらない人には肥満が多いというのが、3食派の言い分だ。坪田教授が解説する。
「マウスやサルなどでの実験で、摂取カロリーを一般的な量の70%ぐらいに抑えると寿命が伸びることが明らかになっています。
また、米国で1万5978人を対象に食事回数と栄養摂取量について調べた研究によると、食事回数が少ないほうが摂取する脂肪やタンパク質の割合が高くなるという。1日1食では、1日に必要な栄養素を十分にとることが難しいのです。
朝食を抜くことと肥満の関係については複数の研究結果で認められていて、サーカディアンリズム(1日24時間周期の生体のリズム)が関係するといわれています。