JR神田駅を背にして出世不動通りの右側の歩道を歩いていくと、軒先にビールケースをうず高く積んだ店が現れる。
ここが角打ちのできる『藤田酒店』。店先のそんな風景にたどり着くだけで、酒をこよなく愛するサラリーマンたちは、何かに柔らかく包まれるような心地よさを感じるのだという。
ガラス引き戸越しに店内に目をやれば、カウンターテーブルを囲んだ男たちが、すべてから開放されたようないい笑顔で、酒や会話を楽しんでいるのが見える。
「酒屋としては80年を超える歴史があるんですが、角打ちをできるようにしたのは2010年。現在の雰囲気に改装したのが、去年の2月ですね。うちは酒屋なのだという姿勢を崩したくなくて、昔から使っている木製の日本酒棚、洋酒棚で店内を囲みました。これが、昭和レトロで落ち着くといって、歓迎してくれているお客さんが意外に多いんです」(3代目・坪田維修<まさのぶ>さん・51歳)