アベノミクスによる資産効果に低金利の後押しもあり活況に沸く不動産業界。特に首都圏のマンション市場は、売れすぎて供給が追い付かない品不足状態になっているというから驚きだ。
確かに不動産経済研究所によれば、2013年度の新築マンションの発売戸数は前年比18.2%増の5万5245戸。2007年のリーマン・ショック前に迫る高水準となっており、今年度も5万8000戸は供給されそうだと予測している。
“タワー億ション”の部屋も次々完売――まさにバブル時を彷彿させる過熱ぶりに見えるが、その内実を知ればいかに「はじけやすい泡」であるかが分かるはず。
『磯野家のマイホーム戦略』、『年収200万円からのマイホーム戦略』(いずれもWAVE出版)などの著書がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏がいう。
「今のマンションバブルは、広く庶民にまでお金が回った超大型平成バブル(1985年~1990年頃)、団塊ジュニア世代がちょうどマイホーム購入期だったファンドバブル(2005年~2008年)よりも規模の小さな“ミニミニバブル”。つまり、本当に住宅が欲しくて買っている人が少なく『実需』のないバブルなのに、価格は跳ね上がっているのです」
では、需要が伴わないのに、これほどマンション販売が好調なのはなぜか。榊氏が続ける。
「マンション業界はリーマン・ショック前までは郊外マンションも含めて年収600万円前後の一般人がターゲットでしたが、いまの商売相手は都心部で7000万、8000万円の部屋を平気で物色する年収1500万円以上の人たち。高額所得者の上位2~3%だけを相手にする“狭域マーケット産業”で成り立っているのです。
お金持ちの最大の関心事は、『10年後にこのマンションがいくらになっているか』という売却をにらんだ資産価値。だから、物件さえよければ資材建築費の高騰で販売価格が上がってもついてくるし、東京オリンピックの開催決定で地価の上昇が見込まれる勝どきや晴海、豊洲の湾岸エリアは、坪単価が300万円以上になっている実力以上の物件でも人気が衰えないのです」
しかし、限られたマーケットゆえに、不動産会社の強気の販売戦略がもろくも崩れ去る危険性も孕んでいる。
「都心の目立ったタワーマンションは日本人だけでなく、投資目的の中国人が3割買い占めているという噂も尽きませんし、いくらオリンピックがあるといっても一過性のもの。供給過剰はどこかのタイミングで響いてくると思います。売れ残りのマンションが次々と投げ売りされれば、相場が落ちて早く売ろうという動きになるのは目に見えています」