2014年3月期、円安によって電機各社が増益を確保する中でソニーは「1人負け」だった。結果、VAIOという看板商品まで売却せざるを得なくなった。かつてウォークマンやトランジスタラジオを生んだソニー魂は復活するのか。ジャーナリストの永井隆氏が、パソコンブランド「VAIO」を売却するに至った理由について報告する。
* * *
「苦渋の決断だった」
ソニーから看板商品が一つ失われた。
2月の第3四半期決算説明会で、平井一夫社長兼CEOは厳しい表情でそう語り、「VAIO」ブランドで知られるパソコン事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却することを発表した。同時に、2014年3月期で10期連続赤字が見込まれるテレビ事業はこの7月を目途に分社化することを発表。さらに国内外で5000人規模の人員を削減することも明らかにした。
VAIOは、ソニーが育てた大型ブランドだった。1996年に発売され、「軽量・薄型」の代名詞となり一世を風靡。高いデザイン性を武器に2010年度には870万台を売った。ところが近年は中国・レノボなどに押され、年間580万台(2013年度見込み)に低迷。撤退が決まった。
ソニーの2014年3月期の連結業績予想は、売上高7兆7000億円。当期純利益は300億円の黒字を予想していたが、冒頭の決算発表で一転、1100億円の赤字予想に下方修正された。他の電機各社が円安の恩恵などで軒並み黒字になる中で、「1人負け」だった。 ソニーは主力のエレクトロニクス部門が赤字続きで苦境にある。
前述したように10期連続の赤字となっているテレビ事業は、累積で7000億円以上の赤字を出すなど厳しい状況だ。営業利益の大半は保険などの金融事業と映画・音楽事業が稼ぎ出す。
ここまでエレキが苦しくなった要因はいくつかあるが、一言で言ってしまえば「ソニーらしさ」の喪失だろう。デザインや音、商品に触れた時の質感など、消費者の琴線に触れる商品。いわばそれは五感を刺激するアナログな部分である。