消費増税前に冷蔵庫・エアコンなど大型家電が売れたことや、ウィンドウズXPのサポート終了に伴いパソコンの買い替え需要があったことなどが奏功し、家電量販店の業績が“回復基調”にある。
業界トップのヤマダ電機が5月8日に発表した2014年3月期決算は、売上高が従来予想を上回る1兆8939億円、経常利益もマイナス予想を覆す前期比4.8%増の501億円となった。
ヤマダだけではない。業界4位のケーズホールディングスの経常利益も計画を上回る前期比34.6%増の314億円。業界8位のノジマの営業利益に至っては、前期比3倍となる61億500万円を叩き出した。
「ノジマは神奈川・千葉など郊外のショッピングセンター内に次々と出店を加速させて、ヤマダやビックカメラ、ヨドバシカメラといった都心部の巨艦店とは違ったファミリー層を掴んでいる」(業界関係者)のも、好業績に裏打ちされた拡大戦略といえるだろう。
だが、家電量販店各社が軒並み潤っているのは、消費環境の変化で一時的な「特需」が重なっただけで、今後の市場動向を不安視する向きも多い。
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がいう。
「これまで安売りを武器に伸びてきた家電量販店ですが、いまや倉庫だけしかないような専業のインターネット通販の低価格には敵わず、リアル店舗は商品を触ってみるだけの“ショールーム化”して久しいのです」
野村総合研究所が昨年7月に実施した調査では、10兆2000億円あるネット通販市場のうち、2兆1000億円が“ショールーミング”による売り上げで、家電やパソコンも30%以上の消費者がリアル店舗で下見をしてからネット購入していた。
ヨドバシのように値札の横にスマホで読み込めるバーコードをつけ、競合するサイト価格を表示させて自ら最安値に挑む量販店もある。ただ、トップのヤマダですらネット通販との安易な値引きが利益率を悪化させ、赤字に転落した経緯があるほど。
家電量販店のビジネスモデルは限界にきているのだろうか。
「そんなことはありませんよ。一般的な家電の量販店価格とネット通販価格をよく比べてみれば分かりますが、ヨドバシやビックのポイント還元を差し引くとほぼ同じ値付けになっています。
溜まったポイントを使い忘れるくらいなら、その場の現金価格が安い通販のほうがいいという人は多いでしょう。でも、ネット通販も振り込みで支払うと安いけど、クレジットカードで購入する場合は余計な手数料や送料がかかって値段が別なんてことも多い。必ずしもネットで買ったほうがリーズナブルとはいえないのです」(前出・安蔵氏)
最近は書籍や日用雑貨、衣服など家電以外の商品を揃えて来店動機を高めさせようとする店舗も珍しくない。そうした普段の買い物でポイントを使えばおトクになるケースは多いという。