安倍政権が集団的自衛権の行使に向けて突き進む「解釈改憲」をめぐる議論が過熱している。メディアも連日、この問題について報じているが、大新聞では賛成派と反対派が真っ二つに分かれ、自分たちのイデオロギーを主張する格好の場とばかりに論戦を繰り広げている。その恣意的な報道は、国民の賛否を“操作”しようとするものなのだ。
5月15日の安倍首相の会見翌日ただちに紙面で反対を鮮明にしたのが朝日と毎日だ。
朝日は〈近づく 戦争できる国〉と国民の不安をかき立て、毎日も〈米国が始める戦争に限りなく付き合うことになるリスクを抱えていることも忘れてはならない〉と批判した。
それに対して、“安倍応援団”として社論を掲げたのが読売と産経である。ただ、各紙とも本当に解釈改憲が必要なのかの議論を冷静に読者に問いかけるのではなく、いたずらに戦争の不安や他国の脅威を煽る報道によって、国民や政党を自社の主張に誘導しようという姿勢ばかりが目立つ。
大新聞のご都合主義は、集団的自衛権行使に関する世論調査の数字にも表われている。最近の各紙の世論調査を比べて、唖然とさせられた読者は多いのではないか。
〈集団自衛権71%容認〉(読売5月9~11日調査)
〈集団的自衛権70%「容認」〉(産経・FNN5月17・18日調査)
解釈改憲賛成を主張する読売、産経はそろって約7割が容認しているという数字を出し、「政府・自民党からは公明党との与党協議の追い風になるとの見方が出ている」(読売)と報じた。
それに対して、反対派の朝日、毎日は、〈「反対」56%〉(朝日4月19・20日調査)〈「反対」56%〉(毎日5月17・18日調査)と、こちらも数字の足並みを揃えて正反対の結果を報じたのだ。
4紙とも自社の主張を国民が支持しているような都合のいい数字を出し、「こっちが国論だ」と主張している。