憲法改正を掲げ華々しく再登板して1年半、株価の下落でアベノミクスが怪しくなってくると、長期政権の呼び声が高かった安倍晋三首相の求心力にも陰りが見えてきた。
官邸トップダウンで特定秘密保護法の制定や教育改革を指示し、有無を言わせず実行する安倍首相の政治手法は「強い総理」を国民に印象付けた。与党内に異論があっても、これまでは高い支持率を背景に黙らせてきた。ところが、いまや安倍首相は党内のリベラル派に押されている。
安倍政権の看板である「集団的自衛権の行使容認」の憲法解釈変更を巡り、自民党内から火の手が上がったのは9年ぶりとなる3月19日の自民党総務懇談会だった。
それまで沈黙していた自民党リベラル派から「集団的自衛権を行使するなら憲法改正でやるべき」との反論が噴出。反対派の急先鋒、村上誠一郎・元行革相は「政府が関連法案を出すなら反対する」と断言した。
加えて、「安倍包囲網」を主導するのが公明党の山口那津男・代表だ。佐藤国対委員長の発言が飛び出した日の夜(3月25日)、山口氏は自民党反対派の村上氏、民主党の岡田克也・前副総理、結いの党の小野次郎・幹事長と4者会談をもった。会談を呼びかけた小野氏が語る。
「国民的議論がほとんどないまま、一政権の判断で憲法改正に等しい解釈変更をしようとする安倍首相の政治手法は間違っているという認識で一致した。村上さんには『山口さんは苦労している。野党はもっと声をあげたらどうなのか』とハッパをかけられた」