本業のエレクトロニクス(電機)分野で3期連続の営業赤字に陥り、パソコン事業の売却や、10年も赤字を垂れ流すテレビ事業の分社化を決めるなど、まさに“崖っぷち”のソニー。
それでも強気の平井一夫社長は、5月22日に開いた経営方針説明会で、「2015年度に4000億円規模の営業利益を目指す」と淡々と宣言した。スマホ開発のモバイル事業や金融事業、映画・音楽といったエンタテインメント事業などに資源を集中させて収益力を高めようというのだ。
特に、平井氏がV字回復の拠り所として真っ先に挙げる「成長ドライバー」が、昨年11月に発売し、世界72か国・地域で700万台を販売する家庭用ゲーム機『PS(プレイステーション)4』である。
確かにPS4の評価は高い。スマホゲームの普及に押される据え置き型ゲームの中にあって、PS4は本格的なゲームタイトルの魅力に加え、自分のプレー動画をネット上で共有できるソーシャルメディアとの連携機能も充実している。ソフト開発で遅れを取り苦戦する任天堂の『Wii U』とは対照的だ。
では、本当にプレステがソニーの窮地を救えるのか。
「ゲーム事業だけにすべてを背負わせて、不振のエレキ事業をカバーするのは無理」と断言するのは、エース経済研究所アナリストの安田秀樹氏。
「PS4は順調に販売を伸ばし、今期は1200万~1500万台ぐらいの販売数量にはなるでしょう。でも、ハード普及のための販売管理費やソフト開発の経費が莫大にかかっているので、収益に貢献するのは少なくても3、4年目あたりからです」
その指摘はソニーが発表する計画数字を見れば明らかだ。2015年3月期の「ゲーム&ネットワークサービス」分野の業績予想は、売上高が1兆2200億円も見込んでいるのに、営業利益はわずか200億円と極端に利益率が悪い。安田氏がその理由を解説する。
「映画や音楽は自社コンテンツを持っているのに、ゲームだけは他社に作らせる方針を取っているから、自前でソフト開発もする任天堂よりも利益率が悪いのです。そのため、ゲーム事業を20年やってきて、過去の最高利益は1000億円止まり。これではソニー全体を牽引する事業にはなりません」