2014年6月22日にヨーロッパ初の神社がサンマリノ共和国に建立される。駐日大使153カ国の代表である「駐日外交団長」で、サンマリノ共和国特命全権大使であるマンリオ・カデロ閣下もこの神社建立を心から喜ぶ。このほど『だから日本は世界から尊敬される』(小学館刊)を上梓したカデロ閣下に話を聞いた。
カデロ:私は敬虔なローマンカトリック信者です。ですが、それでも神道の素晴らしさはよくわかります。神道は自然を神と崇めて大事にしつつも、他の宗教に対しても寛容であるので、広い視野で物事を捉えることができる自然哲学だと思っています。そのような神道の神社を母国に建立できることは本当に光栄なことです。神道は日本文化の根幹といってもいいほどです。
--閣下は靖国神社についての理解も深いですね。
カデロ:靖国神社のことは、国際的にも凄くナーバスなことになっていますが、私が思うに、中国や韓国などはとても大きな誤解をしているのではないでしょうか。
靖国神社は145年前にできた神社です。第二次世界大戦のずっと前です。靖国神社のような、国を守るために亡くなった軍人を慰霊する場所は世界中どこにでもあります。イタリアにはヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂がありますし、フランスのパリには凱旋門がその役割を果たしています。アメリカやドイツにもあります。日本ではそれがたまたま靖国神社なのです。
--駐日外交団長として天皇陛下に拝謁する機会も多いと伺っています。
カデロ:2011年、外交団長に就任してからは毎年、天皇誕生日の茶会の儀に参列し、天皇陛下に祝賀スピーチを申し上げるという大役を仰せつかっております。3回ほど祝賀スピーチをさせていただいておりますが、毎回身が引き締まる思いでいっぱいになります。2013年の茶会の儀では国歌『君が代』と和歌をテーマにスピーチさせていただきました。私のスピーチが終わると、陛下はわざわざ私のところまでいらしてくださり、『大使、日本の文化に詳しいですね。もう何年日本に住んでいらっしゃるのですか?』と、お言葉をかけてくださいました。陛下にお言葉までいただけるとは本当に光栄なことです。
日本に居を移して40年近くになり、数多くの日本人に会いました。国会議員や大会社の社長など地位の高い人も数多くいましたが、最も謙虚な方は陛下です。立ち振る舞いが優雅で、周囲にとても気をつかわれます。私は陛下のことを心より尊敬申し上げております。
--外交官として尊敬する日本人がいるそうですね。
カデロ:日本には、私が外交官として尊敬する人物が何人もいます。まず、はるか400年以上も前に大きな使命を与えられてヨーロッパへ渡った伊東マンショら少年遣欧使節たちです。マルコ・ポーロやバスコ・ダ・ガマ、クリストファー・コロンブス、マゼランなど確かに偉業を達成した人物はいますが、彼らは国から莫大な資金を与えられたプロのナビゲーター(航海士)でした。それに引き替え、伊東マンショらは当時13~14歳の少年たちでした。彼らこそが偉大な外交官なのです。少年使節の大偉業をもっと日本人は誇るべきだと考えています。
また、第二次大戦中に6000人ものユダヤ人の命を救った駐リトアニア日本国副領事だった杉浦千畝氏の勇気も賞賛に値します。日本と同盟国にあったナチス・ドイツに命を狙われる可能性もあったし、外務省の命令に背いてまでも人命を優先しました。外交官として、いや人間として尊敬すべき人物です。