サッカーワールドカップ開催に沸くブラジルでは街のあちこちが代表チームのカラーである黄色や青、緑で彩られている。
そんなお祭りムードに冷や水を浴びせたのが、地球の裏側、韓国の現代(ヒュンダイ)自動車だった。
風にたなびくブラジルの国旗が画面いっぱいに表示され、続いてサッカーの競技場が映し出される。女性が「6」の形をあしらったペンダントにキスする。テレビの前に集まったサッカーファンが歓声をあげる。時折、車が映り込む。
ナレーション。
<ブラジル代表チームがFIFAワールドカップで通算6回目の優勝を果たしたら、われわれの保証を5年から6年へと増やします>
<これはヒュンダイの「ヘクサ ガランチア」です。ヒュンダイだけができること。なぜなら、われわれはクオリティーに自信があるから。そしてブラジルを信じているから。さあ、その時がやってきました>
以上は、春にブラジル国内で流されたヒュンダイのテレビCMである。ヘクサはポルトガル語で「6」、ガランチアは「保証」。もしブラジルが優勝したら、今年1月1日から7月13日までに新車を購入した客の保証期間を延長するというものだった。
それが問題となった。
ブラジルサッカー連盟は、ドイツのフォルクスワーゲンとパートナー契約を結んでいる。CMではブラジル代表チームの姿やロゴこそ使っていなかったものの、同連盟は「権利侵害」として抗議した。
地元大手メディアでもこの問題が取り上げられ、ブラジルサッカー連盟は「ヒュンダイは連盟の利益と権利を利用していた。それがわかった時点で、すぐキャンペーンの取り止めを申し入れた」とコメントした。
ヒュンダイはソニーやアディダスなどと並んで、FIFA(国際サッカー連盟)とパートナー契約を結んでいる。そのためワールドカップ関連商標などの利用は認められているが、「ブラジル代表」を事実上の広告塔として使ったのが失敗だった。
現地のサッカーファンたちも、「結局、車を売ることだけが目的」「こんなキャンペーンに参加するな」などと批判した。