芸能

AKB総選挙 若者が「感謝」を連発する社会に異議ありと識者

 「AKB48」のシングルを歌うメンバーを選ぶ「第6回AKB48選抜総選挙」の開票が6月7日に行われた。人気投票で選抜された彼女たちの言葉から気づいたことはなにか。フリー・ライターの神田憲行氏が語る。

 * * *
 過去のダメな自分をゆっくりとした口調で語り始め、少しずつ声のトーンを高めつつファンに感謝の言葉を綴り、後半になると早口でこれからも努力し続けることを誓い、最後は改めて「ありがとうございました!」とファンへの感謝を絶叫する。

 7日に行われたAKB総選挙の放送を見ていて、順位が発表されるたびにマイクの前で語る彼女らの言葉が興味深かった。AKB話法というのか、一定の様式がある。

 それにしても「感謝」というフレーズがこれほど溢れ出るイベントもそうもないだろう。彼女らはファンにも、サポートしてくれるスタッフにも、周りの仲間にもとにかくよく「感謝」する。どこかで見た光景だなあと考えていたら、高校野球だった。いつごろからか覚えていないが、気づくと試合後の取材で、選手たちはよく保護者や監督に「感謝」するようになった。就活の会社説明会でも、学生が質問する前に「本日は貴重なお話ありがとうございました」と前置きするのが流行りのようで、「キチョハナカンシャ」と揶揄されたりしている。

 あのう、もう若者に「感謝」を強要する社会って、止めません?

 いや、彼・彼女らの素直な気持ちを否定するつもりはない。しかし彼・彼女らの「感謝」の多用は、「そう言った方が受けるよ」という大人側の微妙な空気を反映している気がする。

 高校野球で、私学強豪校に通わせれば、たしかに学費以外に寮費や遠征費などで保護者が大きな出費を強いられることはある。しかしそれは親が子どもに許可してやらせていることだろう。東大行かせるために子どものころから塾に通わせるのと同じように、子どもの教育に親が投資するのは当たり前では無いか。

 AKBの選挙のために、投票権のついたCDをファンがたくさん買い込むことは知っている。自分に対するサポートがカネでやりとりされていることを知っているから、彼女たちが「感謝」したくなるのもわかる。でも、好きなアーティストのCDやグッズを購入してアーティストの活動を支えることは、AKBファンだけではない。ファンとは、そもそもそういうものではないか。

 会社説明会に至っては、説明しているおっさんたちは仕事だからやっているだけだ。

 本当の「感謝」なんて、おっさんになって過去を振り返り、しみじみ湧き出るものだ。若者はそんなことを振り返らず、もっとおおらかに自由に、今の自分を楽しんでアピールして欲しい。「感謝」を連ねる姿に私は痛々しさすら感じる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン