ドル/円の為替相場は今年に入って1ドル=101~104円のレンジ相場が続いている。アメリカのテーパリング(金融緩和縮小)開始でドル高方向に進むとの見方が多かったが、そうはなっていない。その背景には何があるのか。為替のスペシャリストで酒匂・エフエックス・アドバイザリー有限会社代表の酒匂隆雄氏が解説する。
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私は、現状の足元のドル/円相場の上値が重い最大の原因は、市場参加者のポジションが偏っていることだと考えている。投機筋のポジションがわかるCME(シカゴマーカンタイル取引所)の「IMM通貨先物ポジション」や、国内の個人投資家のポジションを見ると、ドルロング(=ドルの買い持ち)が大きく積み上がっている。特に、本邦個人投資家のドルロングは約130億ドルと直近では最大規模まで膨らんでいる。
さらに、これは私見の範囲だが、現役の為替ディーラーにヒアリングすると、ほぼ全員がドルをロングにしている。つまり、市場参加者の多くはドルが上昇すれば売りたいと思っているわけで、ドルの上値が重いのも理解できる。
こうした状態はしばらく続くだろう。というのも現状の101~104円台という水準は、日米双方にとってリーズナブルな水準だと想定されるからだ。
最近ではあまり言及されなくなったが、米国の通商政策には、対外的な為替レートに関する基準があるとされ、ドル/円の場合は1ドル=80~100円と見られている。そして、アベノミクスがスタートしたとき、為替を円安に持っていくために、「円売り」による為替介入はNGだが、金融緩和なら米国サイドもOKする、という見方があり、しかも、当時は、米国の許容レートである100円を超えるような円安も容認されると考えられていた。
この見方はある程度現在も通用するだろうが、今年は米国で中間選挙がある。金融緩和による円安といえども、105円を超えていくような円安が米国サイドの理解を得られるとは考えにくい。