スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)などモバイル機器の急速な普及によって、個人向けパソコンの需要が落ち込んでいる。
6月23日に電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した5月の国内パソコン出荷台数は、前年同月比23.2%増の87万5000台で、5月の過去最高を叩き出したという。内訳を見ると、デスクトップが9.8%増の24万2000台、ノートパソコンは29.3%増の63万3000台だった。
だが、この数字を額面通りに評価するわけにはいかない。
いまパソコンが売れているのは、米マイクロソフトが4月に基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」のサポートを終了したことによる買い替え特需が一時的に続いているだけ。その証拠に、今年1年を通してみるとパソコン出荷台数は反動減を加味して昨年より大幅に減るとの予測も出ている。
さらに、皮肉なことに買い替えが進んでも、「仕事で使わざるを得ないユーザー以外は、パソコンに対するマインドは下がる一方」と指摘する向きもある。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がいう。
「新OSの『ウィンドウズ8』はタッチパネルに対応したタイル型のUI(ユーザーインターフェイス)が売りですが、XPやVista、7を長い間使っていたユーザーにとっては、あまりにも仕様が変わりすぎて触るたびに違和感がある。
そんないつまでも慣れないウィンドウズPCを使うくらいなら、スマホやタブレットで十分事は足りると考えている人が多いのです」
事実、ユーザー側のパソコンの利用頻度は低くなるばかりだ。
「XPのサポート終了で仕方なくノートパソコンを買い替えましたが、日頃ニュースや動画を見たり、簡単なショッピングをしたりするのもスマホで完結してしまっているので、家でパソコンを開く回数がめっきり減ってしまいました」(40代会社員)
携帯端末で買い物の決済までしてしまうことに抵抗のある人もいるだろうが、そうした意識も薄れつつあるようだ。
ある大手ネット証券首脳はこんなデータを示す。
「いま、若い人はパソコンを買わず、ネット証券市場の4~5割、FX(外国為替証拠金取引)に至っては半数以上の顧客がスマホ経由での投資スタイルになっています。あと3年もすれば国内株の半分はスマホやタブレットで取引する時代になるかもしれません」