世界のFX(外国為替証拠金取引)市場で存在感を増す日本の個人投資家。だがそのことで生まれる弊害もあるという。30年以上の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏が解説する。
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世界のFX取引に占める日本の比率は40%と言われていましたが、最近の調べでは57%までさらに伸びているもようです。日本の個人投資家層の市場占有率は、尋常ではないレベルにまで達してきています。市場占有率が高いということは、日本の個人投資家が市場への影響度も高くなるということになります。
最近の相場を見てみると、ドル/円にしても大方のクロス円にしても、今年の2月初頭から、レンジ相場が続いています。日本の個人投資家層の得意とするトレーディングスタイルは「戻り売り」「押し目買い」で、レンジ相場に適合した、あるいはレンジ相場を形成するトレーディングです。
市場占有率が57%もあって、しかも思考の同一性のある日本人トレーダーがお互いに声を掛けることもなく、“あうんの呼吸”で同じことをする可能性は高く、2月初頭からのレンジ相場もそのせいではないかと考えます。
その他にも例を挙げますと、ドル/円で104.00前後まで買い上げられた時、104円より上に、数えきれないほどの戻り売りオーダーが並んでいる気配を感じたことがありましたが、輸出企業のドル売りオーダーのみならず、たぶん、戻り売りと見た個人トレーダーのオーダーが群れをなして並んだためではないかと思われます。
こうした日本の個人投資家層の市場占有率の高さが、市場の活性化の妨げになる危険性があります。それは日本の個人投資家層が従来通り「戻り売り」「押し目買い」というトレーディングスタイルを繰り返すと、マーケットはレンジ相場となり、極端な話、動きをなくしたマーケットになってしまう可能性があるということです。
マーケットが活性化するためには、高値を買い上げ、安値を売り下げてレンジをブレイクする攻めのトレーディングスタイルになることも必要となるのです。