安倍晋三首相は今秋、消費税率10%への引き上げを決断するが、「増税の司令塔」である財務省にとって費税率10%は既定路線だ。それどころか、さらなる税率アップの実現に向けて、この7月中旬から壮大な計画をスタートさせている。
一番槍をつけたのは財務省OBであり、自民党の税制の総責任者である野田毅・党税調会長だ。さる7月16日、都内で開かれたシンポジウムでこう口にした。
「税率10%をやり、次の形をどうするかという段階が必ず来ざるを得ない」
その翌日、日本経済新聞はまるで符丁を合わせたように政府の「経済財政に関する中長期試算」の最新データをもとに、〈財政収支、11兆円赤字 20年度政府試算〉という見出しで具体的な将来の税率をこう報じた。
〈消費増税で赤字を穴埋めする場合、税率を10%へ上げた後に、さらに4%程度の引き上げが必要になる計算だ〉
この報道が安倍政権の始めた増税キャンペーンの一端を表わしている。財務省の中堅官僚がこう明かす。
「省内では最近、“3本の矢”という言葉が頻繁に使われている。もちろんアベノミクスとは関係ない。この先の国の財政を考えると消費税10%程度ではとても持たない。さらなる税率引き上げという目標を達成するための3つのオペレーションのことを指している。この7月にまとめた経済財政の中長期試算はそのうちの1本目の矢(※注)だ」
【※注】その他2本の矢は「中枢人事」と「社会保障の『2025年問題』」。