初対面の猫さえ、親しげな顔をこちらに向けながら路地をゆっくりと横切っていく。そんなのんびりとした風情の下町、南千住6丁目。赤い夕陽に照らされながら歩いてきたサラリーマンのふたり連れが、『角打モリタヤ』と書かれた店の中に消えた。
「昭和元年に祖父が開いた『モリタヤ酒店』を私が3代目として継いだのは、40歳の頃でした。
角打ちができるようにしたところ好評だったんですが、お酒を買いに来る人と飲んでいる人が一緒だと落ち着かないとの声があがりましてね。それではと、10年ほど前に店と棟続きの倉庫を改造し、『角打モリタヤ』という名前の専用小部屋にしたんですよ」(森田繁さん・74歳)