韓国・サムスングループが揺れている。5月10日夜、李健熙(イ・ゴンヒ)会長が急性心筋梗塞で緊急入院した。現在は昏睡状態から意識を回復したとされるが、本稿執筆時点では、まだ意思疎通などはできない状態だという。日の丸家電を駆逐してきたサムスン帝国「最大の危機」だと大前研一氏は指摘する。
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韓国では大統領より「偉い」とも言われる李氏が、もしこのまま復帰できなければどうなるか。サムスンはもとより、韓国そのものが国家的な危機に直面することになるだろう。
韓国のGDPの4分の1を占めると形容される巨大財閥サムスンは(実際は国民の付加価値の総和であるGDPと売り上げや時価総額を比較することは意味がない)、グループ内の企業が直接的・間接的に株式を持ち合っており、その歪な“循環支配”の構造は、まるで半導体の回路設計図のように複雑だ。
実質的な持ち株会社の役割を果たしているサムスンエバーランドはテーマパークの運営とファッション事業の会社にすぎず、時価総額のほとんどはグループ内で唯一の上場企業のサムスン電子である。
来年にかけてサムスンエバーランドとIT関連企業のサムスンSDSも上場すると発表しているが、これは李健熙氏の長男でサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏、長女でホテル新羅社長の李富真(イ・ブジン)氏、次女でサムスンエバーランドのファッション事業担当社長の李敍顯(イ・ソヒョン)氏に経営権を継承するため、あるいは肝心のサムスン電子の株を買い増すためだろう。
しかし、それがうまくいくとは思えない。理由はまず、今の持ち合い構造では株主権が定まらないので、これら関連企業を重複上場することは普通の取引所では認められないからだ。より本質的な問題は、カリスマ経営者が長く独裁支配してきた会社は、その人がいなくなったら“企業版アラブの春”が起きる可能性が高く、統治していくことが極めて難しくなることだ。