ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など、動力源にモーターを使うエコカーばかりが注目されがちな国内の自動車市場。だが、あえてエンジン車の“走り”を追求して独自のブランドイメージを築こうとしているのが、「SUBARU」の富士重工業だ。
<SUBARUが本気で作った、新しいスポーツセダン。スバルにできるすべてのイノベーションを駆使して、スポーツドライビングの新しい可能性を示す>
同社のHPにこんな強気の宣伝文句が並ぶのは、8月25日に発売する新型車の『WRX S4』。
まだ車体のデザインはもとより、細かい性能はベールに包まれているが、今年3月より北米で投入されているベース車の『WRX STI』は、早くも高級スポーツ車としての地位を確立し、生産が追い付かないほどの人気となっている。
もともと、スバルにとってWRXは思い入れの強い車種だった。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が語る。
「富士重工はスポーツカーメーカーではありませんが、昔から全輪駆動(AWD)技術に造詣が深かかったので、長らくラリーの世界で名を馳せてきました。
1990年代前半には未曾有の経営危機でモータースポーツからの完全撤退も噂されましたが、諦めずに開発した『インプレッサWRX』が後に世界ラリー選手権(WRC)で3連覇し、海外で高いブランド力を得るきっかけをつくりました」
結局、2008年にWRCからは撤退することになるが、海外の熱狂的な“スバリスト”が抱く「速いクルマへの憧れ」は衰えることなく、同社を新型WRXの開発へと突き動かした。前出の井元氏が続ける。
「BMWやVWなどヨーロッパメーカーが得意とするスポーツセダンは、初めから時速250kmで走ることを前提に開発され、高い馬力を感じさせないほど乗り心地に優れています。
ただ、スバルも決して負けていません。インプレッサで培ってきた長年の努力が実を結び、新型WRXは海外ではBMWの『Mスポーツ』にも引けを取らない性能と高評価を受けています」