オバマ米大統領はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」のシリアの拠点への空爆を9月22日に開始した。標的となったISの本拠地・ラッカへ3月に潜入取材した報道カメラマン・横田徹氏が語る。
「現地で驚いたのは、戦闘員の出身地が多種多様だったこと。オーストラリアからやってきたという白人の兵士は『母国で居場所がなかった』と語っていた。決して貧しいわけではないし、教育レベルも高かったが、社会で閉塞感を覚えて“自分探し”のためにシリアに入った兵士がいたのが印象的だった。数は少ないが欧米からやってくる白人も出てきている」
米国務省によればISの戦闘員約3万1500人のうち外国人(イラク、シリア以外の出身者)は約1万5000人。そのうち2000人が欧米出身だとする。移民2~3世のアラブ系だけではなく、フランスでは非移民系の富裕層家庭の若者の参加者が増えているとする分析もある。
欧米のジャーナリストを次々と「斬首」するISに白人のインテリ層が参加する理由として、欧州での若年失業率の高止まりなど閉塞した社会状況があると考えられる。社会に不満を持つ若者をISはネットを通じて巧みに勧誘する。シリア情勢に詳しい青山弘之・東京外国語大学教授の解説。
「ISは残虐なシーンばかりネットにアップするわけではない。緑豊かな場所に数人が座って『なぜISに入ったのか』を語らうイメージビデオのようなものを増やしている。欧米社会の問題点をとうとうと語り、ISが理想郷であるように描いて共感を覚えさせてから、理想の実現には戦いが必要だと説くわけです。まず共感させるアプローチが、これまでのイスラム過激派とは違っている」
ISの勢力拡大が欧米社会が抱える問題の映し鏡だとすれば、空爆では何も解決しない。
※週刊ポスト2014年10月10日号