文部科学省が大学に関する二つの審査・調査結果を明らかにした。それは「格差社会」を助長することになるのか。コラムニストのオバタカズユキ氏が疑問を投げかける。
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9月の終わりに、文部科学省が立て続けに2つの結果を明かした。1つは25日発表の大学中退者の実態、もう1つは26日発表の「スーパーグローバル大学」の選定結果だ。
大学中退については、けっこう前から一部の大学関係者の間で問題視されていたのだが、その実態を知り得るデータがなかった。2008年の夏に読売新聞が独自調査で全国500大学の中途退学率を紙面掲載。<昨年度の1年間の退学率は平均2.6%、卒業率は84.6%>と報じて話題となった。
それに焦ってかどうか、文部科学省も2009年になってようやく中退調査の結果を発表した。読売新聞が対象としたものと同じ2007年度の中退率は、全国平均で2.4%だった。小さな数字のように見えるかもしれないが、人数では1年間に6万3421人とかなり大勢の中退者の存在が公式に示された。
で、5年ぶりの今回の調査では、さらに中退者が増えていた。2012年度の全国の大学の平均中退率は2.7%で、人数は7万9311人だったという。0.3ポイントアップながら1万5千人以上も中退者数が増えているのは、その間に大学生の総数が増えたからか。いずれにせよ状況は悪化している。
前回と今回の調査結果で目立ったのは、中退者数の増加だけでなく、その理由の内訳の変化だ。2007年度は「転学」「就職」「経済的理由」がそれぞれ14%台で拮抗していた。それが2012年度では、「経済的理由」20.4%、「転学」15.4%、「学業不振」14.5%と続く。「経済的理由」によって大学を辞めたケースがだいぶ増えている。
両調査が行われた5年間で、大学の学費上昇はどの程度だったか。私立文系の平均授業料は71万7587円から74万1945円へ。私立理系は100万3358円から103万5955円へ。堅調に上がった感じだが、同じ期間に日本人の世帯年収は556.2万円から537.2万円に下がっている。「経済的理由」による大学中退の増加について、文部科学省は<家庭の収入が依然厳しく、格差が広がっていることが背景にある>と説明している。
そう、手垢にまみれた言葉だけれども「格差」が気になる。今回の調査結果では、大学の休学者も前回より2万人増えていて6万7654人。こちらは、「経済的理由」が15.5%で、次に多かったのが「留学」15.0%だ。休学してでも海外経験を積もうという大学生がたくさんいる一方で、学費が払えず中退や休学に至る大学生もよりたくさんいるわけだ。前者と後者とでは、その後の人生「格差」も広がるだろうから、なんとも残酷な話なのだ。
なのに国は、<若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るため、大学教育のグローバル化のための体制整備を推進する>と言って、「スーパーグローバル大学等事業」なるものをぐいぐい進めた。