フルハイビジョン(HD)の4倍の高画質を持つ「4Kテレビ」。ようやく各家電メーカーの製品も揃い、今年6月にCS(通信衛星)を利用した試験放送が始まったばかりだというのに、技術開発の現場は早くもHDの16倍(約3300万画素)という「8Kテレビ」の実用化に向けて動き出している。
10月7日に千葉・幕張メッセで開幕したIT・エレクトロニクスの総合展示会『CEATECJAPAN 2014』で8Kテレビの“ド迫力映像”を披露したのは、共同開発するシャープとNHK。
特にNHKは次世代放送の本命を4Kよりも8Kと位置づけ、なんと1995年から映像や音声、伝送するための圧縮技術など研究してきただけに、8K放送にかける意気込みは半端ない。
「8K放送に必要な技術研究をしてきたのは世界でもNHKだけなので、今後、国際標準にしたいと考えています。
8Kの魅力は、画面の端で潜在的に見えている部分までリアルに再現できること。視野角がさらに広がり視聴の臨場感が増します。現行のHDは60インチを超えると画面の粗さが目立つので、雲泥の差です」(NHK技術担当者)
風景、スポーツ、音楽など、高精細の技術を実感するには最低でも50インチ以上は必要とされているため、4Kモデルでも大画面のラインアップを各社メインに据えている。
9月に40型モデルの「4Kアクオス」を発売したシャープも、「広く普及させるために小さいモデルも出したが、売れ筋は60型以上」(商品担当者)だという。同社がCEATECで試作展示した8Kテレビに至っては、85型と超巨大サイズ。もはやミニシアターに近く、とても一般家庭に据え置くサイズとは思えない。
しかし、シャープの担当者はこんな視聴方法を推奨する。
「4Kでも8Kでも最大の臨場感を味わうためには、視野をどれだけ画面で埋められるかがポイント。そう考えると、例えば60インチなら1.5メートル~2メートル程度の距離で視聴するのがオススメです。極端にいえば6畳間に置いてもおかしくありません。
ただ、ニュースやバラエティーなど画質にこだわらない番組を至近距離で見続けるのは疲れるでしょうから、その都度、視聴環境を変えられる広さはあったほうがいいでしょうが……」
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏は、飽くなきテレビの高画質・大画面化に懸念も示す。
「もちろん大きな画面でキレイな画質に越したことはありませんが、そもそもリアルタイムでテレビを見る機会が減り、パソコンやスマホで十分という人にとっては『見たいものを見たい時に見たい場所で見る』ほうが大事になっています。
どれだけ高画質を売りにしても、肝心のコンテンツが不足している現状では爆発的な普及は難しいといえます。民放の中には4K、8Kに対応したカメラや編集機材を揃えるコスト負担に二の足を踏む局もあり、この先コンテンツがどこまで充実するかは不透明です」