ビジネス

腸で増えるビフィズス菌 当初は社内で関心持たれなかった

シャーレの中の小さな白いかたまりごとに、無数の『ビフィズス菌BifiX』が存在する

 私たちが日々、口にしたり、使ったりしている多くの商品。美味しさや便利さが提供されるまでには、たくさんの人がその開発や商品化に携わり、商品が手に取られるまでのプロセスには、多くの紆余曲折が存在している。時には商品化に至らないケースや、逆に思わぬ形で商品が生まれること、進めていたものが根底から覆るようなことも起きる。

 乳酸菌からビフィズス菌へ、基礎研究の根本である研究対象を変更する――そんな大きな転換を乗り越え、ヨーグルト・フローズンジェリー・ドリンクとシリーズ展開に繋がったグリコ独自の『ビフィズス菌BifiX』も、そうして生まれた。同社Webサイト掲載の「ビフィズス菌BifiX誕生物語」として、コミックでも紹介されている開発の背景や当時の様子をグリコ乳業 商品開発研究所で聞いた。

「1990年代後半、健康維持に腸内環境の改善が重要だと広くいわれるようになるのと同時に、ヨーグルトへの注目はどんどん高まっていきました。しかし “ヨーグルトは体にいい”とひとことで言っても、非常に漠然としています。会社としてしっかり説明ができ、グリコの企業理念である“おいしさと健康”をお客様に確実に提供するため、本格的な菌研究がスタートしました。

 当時の乳酸菌研究グループはまだ4~5人。先行する大手メーカーに比べると規模も小さく、何から手をつけたらいいか暗中模索でしたが、健康の根源であり、基本となる“腸内細菌と人の関わり”に焦点を合わせて研究を進めていくことになりました」と語るのは、グリコ乳業 商品開発研究所 乳酸菌研究グループリーダーの西嶋智彦さんだ。

 人間の腸内には数百から1000種類程度、全部で100兆個以上の腸内細菌が存在する。その腸内細菌のバランスを良くして人間の健康に一番役立つ菌を探し出そうというのが、グリコ乳業の基礎研究チーム立ち上げのきっかけ。まずは、当時もっともポピュラーな善玉菌である乳酸菌をより多く腸に届けるために、最強の乳酸菌を探し出そうということになった。

 乳酸菌は植物やフルーツ、漬物、未殺菌の牛乳や、人の腸内など、自然界のさまざまなところに存在している。そうした菌株の採取担当となった1人の女性研究員の懸命の努力で8000株近い菌が集められ、1つずつ胃酸や消化液などに負けない耐酸性があるか――といった確認のため、日々地道な実験が繰り返されていったという。

「ところが乳酸菌研究が続けられていく中で、乳酸菌は実は腸内細菌のわずか1%以下なのに対して、同じような働きをするビフィズス菌は10%を占めていることに当時の研究リーダーが着目。善玉菌の主流派であるビフィズス菌の研究に大きく方向転換をすることになったのです。それまでの研究からは180度の転換でしたが、その数年後、コレクションされていたビフィズス菌株の中に、強力なビフィズス菌が発見され『BifiX』と名づけられました。

“生きて腸まで届く”が当時の乳酸菌やビフィズス菌研究のスタンダードだったので、この『ビフィズス菌BifiX』が胃酸や消化液に負けず、しっかりと腸まで届けば良いな……という期待を込めて、ボランティアの方々に協力いただいて摂取実験を繰り返していきました。すると驚いたことに、摂取した『ビフィズス菌BifiX』の数より、便と一緒に排泄された数のほうが多いことが判明しました。生きて腸まで届くどころか、“腸で増える”ことが実証されたのです」(西嶋さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン