午後5時少し前の『信国(のぶくに)酒店』。新しすぎず、ほどよい雑然さでほっとした気分にさせてくれるカウンターでは、常連客3人がすでに角打ちを始めていた。
そこへサラリーマンの二人連れが元気にやってきて、女将の信国美佐子さん(69歳)と、顔なじみの彼らに笑顔であいさつを交わしながら、「今日はこっちにしよか」と、店中央のぽっかり空いたスペースに目を向ける。
そして、おもむろに奥からビールケースを引っ張り出してきて、そこに積み重ね始めた。
「3つ重ねて、板をその上に載せて…、これで角打ちテーブルの出来上がり。この店はそこから始まるんですよ。子どもの頃の積木遊びみたいで楽しいよって、お客さんが勝手に作っています」と笑う美佐子さん。
つるべ落としの陽が夕焼け空から消える頃には、自前の角打ちテーブルがいくつかでき、いつものメンバーがいつものように飲んでいる風景が目の前にあった。