いよいよ、地方銀行(地銀)の大再編劇の幕が上がった――。地銀最大手の「横浜銀行」が、東京を地盤とする第二地銀の「東日本銀行」と経営統合する方向で最終調整に入ったからだ。
預金量11兆円を誇る横浜銀は全国でも指折りの優良地銀として知られ、かねてより再編の引き金を引く“台風の目”とみられてきた。
地元、神奈川県で強固な顧客ネットワークを持つ「地銀の雄」が、わざわざ県域を越えて他行と組まなければならない背景とは何か。
「横浜銀に限らず、地銀各行は足元の景気回復で経営が安定しているが、いまの超低金利時代に加え、将来の人口減や地方経済の衰退を考えると、収益力がどんどん縮小していくのは確実。そこで金融庁も全国に105行ある地銀は“オーバーバンキング状態”にあると再編を促してきた。
そうした国からの圧力もあり、今年1月には北海道銀行や七十七銀行(宮城)、静岡銀行など有力地銀の9行が取引先の事業支援で手を結んだ。
そこから漏れた横浜銀も旧大蔵省で事務次官を務めた元頭取の小川是氏(現特別顧問)が地銀同士の連携を模索したり、今年8月には三井住友信託銀行と資産運用会社の共同設立を発表するなど、他行との関係を深めてきた」(全国紙の金融担当記者)
では、今回、横浜銀が選んだ統合相手が、規模も小さい第二地銀の東日本銀行だったのはなぜか。金融ジャーナリストの小泉深氏が語る。
「横浜銀はバブル崩壊後に千葉銀行や足利銀行(栃木)、常陽銀行(茨城)との合併説が出たこともあり、“関東圏銀行”への拡大が取りざたされてきました。東日本銀は東京が地盤といっても千葉や茨城にも食指を伸ばしていたので、より広い範囲をカバーできるメリットがあったのでしょう」
東日本銀にとっても、横浜銀との統合は“渡りに船”だったのかもしれない。小泉氏が続ける。
「融資の取引先企業は、大手はメガバンクにシェアを握られ、中小企業はドブ板営業を続ける信用金庫に情報力でかなわない。第二地銀は苦しい立場であるといえます。そこで、資金力が豊富な相手と一緒にスケールメリットを追えば、金利競争や顧客の奪い合いもできるようになります」