高級コスメ購入のきっかけは?
口コミレビューサイトやSNSが発達したいま、買い物をする前にネットで商品の評判を確認するのは当たり前になった。とはいえ、その評判を鵜呑みにしないのが近ごろの標準的な態度だ。化粧品などの美容関連で新たな商品を購入する前に、30代の美希さんは商品レビューを必ず確認している。とくに、低評価のレビューや口コミは、絶対に熟読するという。
「その化粧品が自分にとってよいかどうかは、本音では使ってみなければ分からないと思います。でも、価格が高いと気軽に試すのは難しい。その代わり、口コミレビューサイトを見るんです。高評価はどれも似たような内容になりがちですが、低評価のレビューは具体的で参考になることが多いです。低評価レビュアーの他商品への評価も確認して、すべてに辛口なのかみたり、肌の特徴を自分の肌質と比較したりします。
値段が高いものを検討するときほど、ていねいに口コミを確認しています。高評価な評判だけだと購入に踏み切れなくても、低評価のレビューが具体的だと、案外、購入のきっかけになりますね」
長く続いたデフレの影響で低価格の商品ほどもてはやされているかと思えば、コスメの場合は異なる傾向が出ている。ファッションや美容に関心が高い女性向け雑誌読者を対象に、コスメを買うときに重視していることを聞いたところ「自分の顔や肌に合っている」(87.0%)や「効果がある」(78.7%)が多く、重視しなくなったことの筆頭に「値段の安さ」(61.5%)が挙げられている(小学館女性インサイト研究所調べ)。
みんなが良いというから、価格が手ごろだから、という理由で美容関連商品の購入を決めなくなっているのだ。この変化は、美容家電や化粧品の商品開発にも発想の転換をもたらしている。たとえば、今年9月に発売したパナソニック株式会社の「目もとエステ」(リフレタイプ)は、昨年売り出した商品に、これまでとは異なる方法で消費者の意見を反映した新商品だ。
「以前はWEB調査でバーッと多数の意見を聞いたり、グループインタビューで『10人中8人がいいと思った』というような指標で調査していました。が、今は10人の中で1人でも『すごくいい』と言っている人がいたら、『その人はなぜそんなにいいと思ったのか』『どういいと思ったのか』っていう深堀りをするようになりました。この商品は目を酷使している方や男性からもニーズがあり、その層からの意見を徹底的に聞いています。
新商品は機能をある程度搾って本体を薄くしました。メーカーとしては機能を上乗せしたくなるのですが、目的を絞ってニーズに応えていくというのが私たちの企画の仕方でもあります」(パナソニック株式会社 ビューティ・リビング事業部商品企画グループチームリーダー・北岡慶子さん)