懐具合をさほど気にせず、お腹いっぱい寿司を食べられるのが回転寿司の魅力のひとつ。今や牛丼を上回る5000億円市場に急成長した回転寿司業界の儲けの”ネタ”に、ジャーナリスト・鵜飼克郎氏が迫る。
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まずは1皿100円の握り寿司を主力商品とする大手回転寿司チェーンの舞台裏を覗いてみよう。国内では『スシロー』『無添くら寿司』『かっぱ寿司』『はま寿司』が”四天王”と呼ばれており、4社合計の店舗数は全国で1300店を超え、全体の3分の1近くに迫る。夕飯時には30分から1時間の空席待ちも当たり前。子連れのファミリー客が多く、カウンターには次々と皿が重ねられていく。
客単価は平均1000円程度とされる回転寿司だが、実は飲食店の中でも食材原価率が高いことで知られている。
「全皿が100円均一の場合、原価の高いネタはウニ(85円)、マグロ(75円)、イクラ(70円)など。これらの人気商品には原価をかけ、赤字覚悟で客の満足度をアップさせるのが大手回転寿司チェーン共通の経営方針です」
そう話すのは、回転寿司評論家で『回転寿司の経営学』(東洋経済新報社)の著書がある米川伸生氏だ。
「もちろん、ウニやマグロばかり出れば店の利益は薄くなりますが、100円回転寿司はファミリー客の利用が圧倒的に多い。子供が好きなタマゴやエビ、ツナマヨコーン、カッパ巻きなど(いずれも原価20円程度)を食べることで採算が取れるようになっているのです」
外食産業の裏側に詳しい「食品安全教育研究所」代表の河岸宏和氏によれば、厨房でも徹底した合理化が図られているという。