自動車エアバッグの異常破裂による死亡事故が相次ぎ、米国で“集中砲火”を浴びている部品メーカーのタカタ。その影響は一部品メーカーにとどまらず、完成車メーカーや日米関係にまで飛び火しかねない状況になってきた。
12月9日、タカタの最大ユーザーであるホンダは、原因究明を待たずにエアバッグの無料回収・修理を行う「調査リコール」の対象を全米のみならず世界中に拡大。日本国内でも13万4584台の調査リコールを実施すると発表し、リコール台数は累計で計1300万台にのぼる見通しだ。
ホンダは先ごろ、エアバッグによる死傷事故を含め、2003年から10年以上、1729件のリコール報告を怠っていたと米当局から指摘されていたこともあり、「このままタカタ問題が長引けばホンダ離れが進みかねない」(経済誌記者)との判断から、早期の事態収束に乗り出した。
経済ジャーナリストの池原照雄氏も、ホンダの業績悪化を懸念する。
「ホンダにとって北米市場は大事な収益源なので、タカタ問題の影響は計り知れません。特にリコール問題は時間が経ってからでも、『次にクルマを乗り換えるなら別のメーカーにしよう』というユーザーが出てくるので、ボディブローのように徐々にダメージを受けます」
今後、ホンダがリコール費用をいかに負担するかによっても深刻度合いは変わってくるが、そもそも当事者であるタカタの経営が持つのか――といった問題もある。
「タカタは今期、リコール費用がかさむことから250億円の最終赤字を見込み、すでに476億円の特別損失を計上している。自動車業界アナリストの中には、さらに追加対策で1000億円規模の費用が必要になると試算している人もいる。その他、米国で起きている集団訴訟の和解金などが発生すれば、一気に経営危機に陥る」(前出・経済誌記者)
ホンダの伊東孝紳社長は、日本経済新聞の取材に<誰も助けなければホンダが経営を支援する>と述べているが、果たしてどこまでその責任を負えるのか。
自動車ジャーナリストの井元康一郎氏は、こんな見解を述べる。
「今回の問題は原因がはっきりしているわけではありませんが、タカタの企業体質が招いた災厄といっても過言ではありません。十分な説明責任を果たさず、いまだに同族経営のトップ(高田重久会長)が公の場に出てこないなど、危機管理能力の欠如が火種を大きくした感は否めません。
こんな杜撰な状況なので、欠陥エアバッグを製造していたメキシコ工場の品質管理や従業員教育が、完成車メーカーに比べて遅れを取っていたのではと疑われても仕方ありません。いくらタカタの株主といっても、ホンダが全面的に支援に乗り出して経営をコントロールするのは容易ではないでしょう」