性感染症の報告数はこの10年間でほぼ半減した。ただし、15~19歳の若者に限ると、2009~2012年まで3000件を割り込んでいたクラミジア患者数が2013年に再び3110件報告されるなど、再び増加しつつある。地方自治体が啓蒙に力を入れるのは当然の成り行きだが、教育現場の試行錯誤が思わぬハレーションを招いた。
キラキラ輝くデザインの表紙は一見、若者向けのファッションミニコミ誌かと思えるが、実は高校生や大学生向けに作られた性感染症予防啓蒙のための小冊子だ。この全32ページの冊子を高校生に配った山梨県で、ちょっとした騒動が起きている。
タイトルは『コミュニケーションが防ぐAIDS&STI』。STIとはセックスやキス、ペッティングなどの性的な行為で起こる感染症を指す用語である。
若者に興味を持たせようと苦心したのだろう。医学的解説の合間には、大学生2人、高校生2人の男女4人グループがやり取りしたという設定のメール文面が掲載されているのだが、そのやりとりがあまりにも突飛なのである。
まずは「女子大生ミカ」のメール。
〈Sub(編集部注=タイトル):AIDSってやばいって言うけど、なに?
大学に入ってから、「AIDSやばいから気をつけなよ」って女子大の先輩から言われたんだけどさぁ。しかも、うちの女子大の4年の先輩が風俗でバイトしてて、その人が危ないってうわさは聞いたよー。でもさ、とりあえず、AIDSってやりまくってる人がやばいんでしょ?(後略)〉
ミカの友人の「女子高生アイ」はこんなメールを書いた。
〈Sub:ギャー! STIの可能性があるかもって。
(前略)別れた彼氏が、ほかの女と付き合ってて、性病をうつされたんだって。で、その友達が「その元彼とやっちゃったんだったら、性病になってるはずだから病院で調べてもらったほうがいいって」。まじしょげるよー。だって、親とかにばれたら、白い目でみられそうじゃん? どうしたらいいかなぁ?〉
いかにも大人が想像で書いた“若者なりすましメール”といった風情だが、言葉遣いも話の内容もいくら何でも子供じみているし、“バカっぽい生徒が性感染症になりやすい”という先入観を持たせる書き方だ。そのことが冊子を受け取った生徒や保護者の間で物議を醸している。