1970年代に始まった日本の宅配システムが限界に達しつある。今ではネット通販では「送料無料」が主流だが、それも宅配業者が、荷主企業からのダンピングに応じてきたから成立しているものだ。
ヤマト運輸では、2000年代初頭には1個あたり700円以上あった運賃単価が574円にまで下落。佐川急便も同じく1000円近くが486円にまで落ちた。宅配便の荷物量は増えているのに単価が下がっているので、「豊作貧乏業界」とも評される。
業者側もついに音を上げた。宅配業界は、業界1位のヤマト運輸のシェアが46.3%、2位の佐川急便が33.9%、3位の日本郵便が11.9%と上位3社が9割以上を占める寡占状態。彼らは価格競争やサービス競争でシノギを削ってきたが、3社とも同じ悩みを抱える今、料金改正が各社共通の課題になっている。
実際、佐川急便は荷主に対しては値上げを求め、昨年、大荷主であるネット通販大手のアマゾンとの配送契約を解除した。その結果、今年3月期には、総個数は10%減らしたものの、経費削減効果で連結営業利益は40%増の433億円となった。
ヤマト運輸も今年に入り、24年ぶりに値上げに踏み切り、単価を574円から2%増の587円に引き上げた。物流コンサルティング企業「イー・ロジット」の代表取締役で『物流がわかる』(日経文庫)の著者・角井亮一氏がいう。
「すでにアメリカは、私の感覚だとUPSなどは日本の3倍の宅配料金です。値上げが容易な寡占状況に加えて、ドライバーが圧倒的に不足している現状が続けば、1年以内に日本でも大幅な価格上昇が起きる可能性がある」
輸送コストが上がれば、すべてのモノの値段の上昇圧力になる。メーカーが商品を値上げしたり、内容量を減らすような事態になるかもしれない。
値上がりは避けられそうにないが、遅配に関しては対策も進められている。1つが「くのいち」部隊の採用だ。