ユーモア溢れるエロティックな展示が名物の「秘宝館」の閉館が全国で相次いでいる。その魅力とは何か。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が「大人としてひと皮むける秘宝館巡り」を勧める。
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世界に誇る日本の文化はたくさんありますが、秘宝館も間違いなくそのひとつ。いわゆるクールジャパンってヤツです。元祖は1972(昭和47)年に三重県で開館した、その名も「元祖国際秘宝館」。やがて全国の温泉地に次々と誕生し、1980年代には全国に20館以上が存在していました。
しかし、秘宝館を支えていた団体旅行の衰退と施設の老朽化で、21世紀に入ってから次々と姿を消してしまいます。去年3月に佐賀県の「嬉野武雄観光秘宝館」が、暮れには栃木県の「鬼怒川秘宝殿」が閉館。残っているのは静岡県の「熱海秘宝館」だけになりました。
これは由々しき事態です。日本のエロ状況がどこかいびつになってしまったのは、秘宝館が衰退し、秘宝館を知らない大人が増えたからと言っても、たぶん過言ではありません。仮に過言だったとしても、大人(とくに中年オヤジ)にとって秘宝館は、性やエロスにどう向き合うかを学べる「エロの松下村塾」です。私もこれまでに、三重、佐賀、大分、そして熱海の秘宝館を訪れましたが、そのたびに大切なことをたくさん教わりました。
今ならまだ、かろうじて間に合います。最後の砦の「熱海秘宝館」に、奥さんや彼女や女友達を誘って繰り出しましょう。近ごろは女性客のほうが多いらしいので、きっと興味を持ってもらえるはず。いっしょに行ってくれる女性が誰もいなくて、男同士や男ひとりで訪れたとしても、それはそれで大人の渋さや哀愁を身に着ける鍛錬になります。
「熱海秘宝館」で必ず体験しておきたいのが、ハンドルを懸命に回して、バス停の前に立つ某ハリウッド女優そっくりの人形のスカートを風で舞い上がらせる「モンロー」。人形のスカートがめくれたからどうしたという疑問もありますが、それは言いっこなしです。