春からの新生活に向けて、新居探しや引っ越しに動き始める人も多いこの時期。物件の選び方に変化が見られる今、物件探しのトレンドについて住まい選びアドバイザーの中川寛子さんに聞いた。
賃料は、全体の傾向として「低いところで安定しています。場所によってはさすがに下げ止まった感じはありますが、敷金・礼金も下がっており、借りやすい状態は続いています。昨年は消費増税もあって駆け込む動きがありましたが、今年は1月の動きでいうと鈍いですね。昔は早い時期に新築を確保する動きがありましたが、今は新築にこだわる人は減っていますし、3月の年度内に引っ越しを考えてもそれなりに物件はあると思います」と中川さん。
単身者に人気なのが、比較的安く住めて、寂しさを感じないシェアハウスだというが、最近の賃貸市場で目立つのは、そのシェアハウスの多様化だという。空き家が増えている今、有効活用できて貸す側にもメリットのあるシェアハウスだが、特色のあるタイプが増えたという。その理由とは?
「数が増えた分“普通”では厳しい状況です。インテリアや家具に凝って…というのも、もうだめ。趣味性を強く出したものや、新しい暮らし方を提案するようなシェアハウスが人気です。例えば、料理が好きな人たち向けに大きなキッチンがあったり、1年ほど前に、東急電鉄が渋谷区有の建物を借り受けて作ったシングルマザー限定のシェアハウスなど、対象者を限定した物件が挙げられます」
そもそもシェアハウスが受けている理由のひとつに“繋がり”というキーワードがあると中川さん。
「今、繋がりを作る物件が増えていると感じます。趣味や共通項のある人を集めれば、自然にコミュニティーができますよね。入居者以外にも、地域の人も使えるコモンキッチンがあったり、料理教室として解放したり、地域との繋がりを大事にするシェアハウスが増えています。シェアオフィスも同様で、地域の人と共用するスタイルが出てきています」
同じく継続して人気なのが、“新築より安くあがり、場合によってはいい立地に住め、自分の好きなようにも変えられる”リノベーション物件。著名なデザイナーや建築家による、中古でも高額な家賃のリノベーション物件が出たり、無印良品がURとコラボしてリノベーションプロジェクトを打ち出すなど、ここ数年リノベーションが人気だが、賃貸物件においても人気は高まっているという。
「昨年、国交省が、借主が自費で修繕やDIYを行う借主負担型の賃貸借契約の指針を策定しました。素人でも塗りやすいペンキやはがしやすい壁紙など建築資材が良くなっていて、自分でDIYをしたい人は増えています。ただ、部屋を出る際の原状回復の問題がありますから、ルールをきちんと決めないと後でトラブルになりかねません。大家は修繕にお金をかけない分、家賃を安くするべきだと思われますが、中には、修復してもらって価値を高めてもらうにもかかわらず家賃を高く取りたいと考える大家さんもいて、ルールの整備は途上の面もあります」
リノベーションの形態も多様化し、オフィスや店舗を住宅にしたり、その逆もあり、塾を作ったりとさまざまな形が生まれてきているという。