プロの勝負師の世界で全タイトルを独占することは卓越した技量を持っていたとしても至難の業だ。将棋では19年前に天才棋士・羽生善治(44)が25歳で史上初の7冠制覇を達成した(現在は4冠)。
そしていま囲碁の世界にも新たな天才が出現した。井山裕太、25歳。一昨年は7大タイトルのうちの6冠を獲得。昨年は王座、天元を失って4冠に後退したものの、「史上初の7冠に最も近い棋士」と期待され、現在、囲碁界最高のタイトル棋聖戦の防衛戦の真っ最中だ。19歳違いの天才2人の「8冠対談」が週刊誌で初めて実現した。その一部を紹介しよう。
──羽生さんは15歳、井山さんは12歳でプロ入りした。天才棋士としてどんな育てられ方をしたんですか。
羽生:私は師匠(二上達也九段)に指してもらったのは入門のときと、新年に挨拶に行ったときに1回、そして公式対局の3回しかない。将棋も囲碁も、師匠から直接教わるという伝統はほとんどないが、井山さんは入段まで師匠の石井邦生九段に1000局も打ってもらった。珍しいケースでしょう。
井山:小学生になる前からネットを通じて打ってもらいました。師匠からは定石を覚えなさいとか、もう少し全体のバランスを考えてとか、一切いわれたことがないんです。もうとにかく、『打ちたいように打ちなさい』と。