イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束された湯川遥菜氏、後藤健二氏の戦慄の画像は、動画サイトなどを通じて瞬く間に全世界に配信された。
自国民が被害者となったことで、日本でもインターネットを駆使したイスラム国の広報活動が知られるようになったが、残虐な画像は日々配信されている。
「その主な狙いは敵対するシリア軍やイラク軍、有志国軍の兵士、さらには支配地域の住民らを恐怖に陥れて萎縮させることですが、同時に全世界にイスラム国の脅威を知らしめることにつながっています」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)
一方で、彼らは、自らの正当性を訴え、仲間を増やすための“PR動画”も数多く製作。
「兵士たちの勇姿を強調するリアルな戦闘の動画のほか、人気ゲームを模して仲間入りを呼びかけるリクルート・ビデオも作られています。また、無料のオンライン雑誌『DABIQ(ダービク)』を配信し、孤児や貧しい人々に食事や戦利品を分け与える様子を記事にしています」(元駐シリア特命全権大使・国枝昌樹氏)
かつてヒトラーは、当時先端のメディアだった映画をプロパガンダに利用した。イスラム国は、全世界に瞬時に通じるネットのSNSなどを活用して規模の拡大を試みる。敵には恐怖を、味方になりそうな若者には兵士の勇敢な姿を植え付けている。
※週刊ポスト2015年2月13日号