文具は、いつの時代も子供たちの「憧れ」だが、心を躍らせた文具は世代によってガラリと変わる。
1980年代は、文具がもっともカラフルになった時代といえる。1990年代以降に入るとワープロやパソコンに押され気味となるが、この時代は大人もシステム手帳が必需品で、最後の手書き時代。
時代を代表するのが『TEAM-DEMI』(1984年発売)。ハサミ、ホッチキス、カッターなどの小型文具7点を手の平サイズのケースに収めたキットは大人にも大人気で、OLがデスクに常備している姿もよく見られた。
「ゴルフコンペの景品で当たったと思ったら、コピー商品でガッカリした経験がある」(50歳会社員)
この分野には玩具会社も参入。バンダイ『カードマニア』は、コンパクトなカードに、ハサミ、コンパス、カッターなど複数の機能が一体になっており、最終的にはロボットに変形してしまう。この遊び心はさすがである。
「多機能」の波は、子供たちにも波及した。「多機能筆箱」「多面式マチック筆入」などとして知られる筆箱が、小学生男子を中心に大ブームとなる。
F1やスーパーカーなどがデザインされた筆箱は、4つ以上のポケットを備え、ハサミや定規、消しゴムなどを別々に収納できた。これら多機能筆箱のブーム過熱によって「持ち込み禁止」という措置をとる学校も出てくるほどだった。
その反動もあって、一躍主流になったのがシンプルで安価な「缶ペンケース」である。当時は街中にファンシーショップがあふれ、サンリオの「けろけろけろっぴ」「みんなのたあ坊」などキャラクターをあしらった文具が多数登場した。
※週刊ポスト2015年2月13日号