北海道の中央部、人口わずか2万3000人足らずの『美唄市(びばいし)』で、半ば強引な条例化案が押し通されようとしている。
官公庁や学校、医療機関など公共施設の「全面禁煙」、その他、不特定多数が利用する施設の「原則禁煙」または「分煙」などを明記した、いわば“禁煙条例”である。2月19日に開かれる臨時の議員協議会で趣旨説明が行われ、3月の議会で採決される見込みだ。
これまで受動喫煙防止対策を目的とした条例は神奈川県や兵庫県で施行されてきた。北海道の市町村レベルでは初の上程となる。
全国的に喫煙者のマナー向上や自主的な分煙の取り組みも進む中、どうして美唄市のような小さな自治体で法的な強制力もある条例が必要なのか。市の担当者にその理由を聞いてみた。
「条例化の検討は、2013年3月に『びばいヘルシーライフ21』(市民とともに進める健康づくりの行動指針)を策定し、その中で喫煙問題を重点テーマのひとつに掲げたことから始まりました。まずアクションプランとして通学路の喫煙を防止するための条例整備を盛り込みました。
ウチの市は通学路も広範囲に及びますし、受動喫煙に配慮しなければならないという意味での“精神条例”みたいなイメージです。それによって、市民の理解や関心度も高まるのではないかと考えました」(美唄市保健福祉部健康推進課長の川西勝幸氏)
川西氏が精神条例と表現したのは、条例規制はあくまで「努力義務」に留め、「違反者へ罰則を科したり、市の立ち入り検査を行ったりすることはない」(同氏)方針のためだ。それだけに、条例化にこだわる意図は分かりにくい。
条例化のプランが市民にどこまで周知されていたのかについても疑問が残る。先に記した行動指針には施設ごとの禁煙目標は書かれておらず、昨年12月に策定された受動喫煙防止のガイドラインで加えられた項目だ。それからわずか2か月の条例導入開始はあまりにも早い。市民や施設主らの意見聴取や検討はきちんと重ねられたのか。
「もともと行動指針を策定したときから市民団体の代表者などに集まっていただき検討を続けてきましたし、中身については市のホームページや市民が多く集まる公共施設、広報誌などで逐一告知をしてパブリックコメントも求めてきました。今後もそれは変わりません」(川西氏)
逆に、粛々と条例化へのプロセスを踏んでこられたのは、禁煙・分煙の推進でもっとも影響を受ける飲食店や事業所などを対象から除外する予定のため、大きな反発が起こらずに“ゴリ押し”しやすかった――と取れなくもない。