かつて、世界販売1000万台に迫る売れ行きを誇っていたソニーのパソコン「VAIO」。それがいつの間にか赤字垂れ流しの“お荷物”となり、部門売却の憂き目にあったのが昨年7月のこと。
事業は投資ファンドに引き継がれ、ブランドもそのままに新型パソコンの開発が長野県安曇野市(VAIO株式会社)で行われてきた。そして、ついに“新生VAIO”のフラッグシップモデルとなるノートパソコン『VAIO Z』が発表され、予約の受付が始まった。
「ユーザーが求めるものをとことん突き詰める」――。新会社の関取高行社長が掲げた理念は<本質+α>、すなわちVAIOの原点である高品質路線を極めるという意思表示だ。
いまだ5%の出資比率があるとはいえ、ほぼソニーの後ろ盾がなくなったメーカーが独自に生み出したハイエンド機種。気になるのはやはりその実力だろう。さっそく、IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏に聞いてみた。
「処理能力を上げるために高速CPU(米インテルのコアi7)を採用していたり、内部構造を見直して大容量バッテリー(15.5時間の長時間駆動)を搭載可能にしたりと、ビジネスユースのために徹底的に性能を追求した点で評価は高いと思います」
VAIOは同モデル単体での販売目標を明らかにしていないが、ソニー時代の仕様で発売済みの既存機種なども含め、「2015年度(2015年6月~2016年5月)の販売目標は30万~35万台」(広報担当者)という。
この販売数字は果たして達成できるのか。某証券アナリストはこう予測する。
「VAIOは当面国内販売をメインにしていく予定なので、ソニー時代の国内販売台数70万台前後と比べると半数程度。ただ、安価な製品も多く、パソコン離れが叫ばれる中にあっては、楽々と売れる台数ではありません」
VAIO Zの価格は税別で18万9800円~。前出の安蔵氏も、「10万円を切るモバイルノートPCもざらにある中で、性能やデザイン性、質感の良さを満たしたモデルのニーズは決して高くはありません」と、価格面での不安要素を口にした。