低カロリーで食物繊維が豊富、価格も手頃ということで、身近な健康食品として人気を博しているきのこ類。その中でも、年間生産量13万3500トン(平成25年/林野庁調べ)と、きのこ類として最多を誇るえのき茸が「内臓脂肪に働きかける成分」を含んでいるとして注目を集めている。
「白くて華奢なのに、鍋料理に入れて煮込んでも噛み切れないほど歯ごたえがあり、消化にもあまりよろしくない(笑)。このきのこには、きっとまだ見つかっていない何らかの力があるに違いない、と以前から考えていました」
こう話すのは、横浜薬科大学の渡邉泰雄教授。渡邉教授は、脳神経科学をベースに、食品科学・免疫科学・臨床薬理学と幅広い分野の研究を行っている。きのこについては、昔から薬効成分が含まれているものがあることが知られているが、渡邉教授が研究の中で出会ったのが、乾燥させたえのき茸を粉末にしたものに含まれるキノコキトサンという成分。
「この粉末を湯で溶いた『えのき茶』を8週間にわたって被験者に飲んでもらったところ、『便通がよくなった』『おなか周りがすっきりした』などの声が集まりました。そこで、CTスキャンを使って内臓を調べたところ、内臓脂肪が平均約23%減っていることがわかったのです。また、BMI(肥満指数)が25以上の肥満気味の人では特に、脂肪の減り方が大きいという結果も出ました」(渡邉教授)
こうして約200症例を分析し、キノコキトサンには内臓脂肪低減に役立つ何らかの成分が含まれていると確信した渡邉教授は、キノコキトサンが内臓脂肪に働きかけるメカニズムを探る研究をスタートさせた。
「静岡県立大学の山田静雄教授、立教大学の常磐広明教授らと一緒に研究を進めた結果、キノコキトサンには4つの脂肪酸から成る独特の成分が含まれていることがわかりました。そして、この成分が内臓脂肪細胞のアドレナリン受容体に間接的に働きかけるというメカニズムが明らかになったのです」(渡邉教授)