西川公也前農水相の辞任のきっかけは、2月19日の衆院予算委員会での玉木雄一郎・民主党代議士による質問だった。玉木氏は民主党内で「疑惑のスナイパー(狙撃手)」と呼ばれ政権の追及役を務めており、西川氏が農水省の補助金交付団体や企業から違法献金を受けていた問題を追及し辞任に追い込んだ。
すると産経新聞は2月22日付で〈民主・玉木氏団体に280万円 同一代表者、8社から 西川農水相への寄付「脱法」追及〉と見出しを掲げ、玉木氏の政治資金問題を報じた。朝日新聞も〈民主・玉木議員後援会、同じ社長の8社から280万円〉(朝日新聞デジタル)と後追いした。実は産経の記者が取材する前から、西川氏は「記事が出る」と吹聴しており、報道の裏に、安倍政権・自民党との緊密な連携があった可能性を濃厚に示している。
安倍晋三首相とメディアの強力な結びつきの代表が、玉木氏追及の先兵役を演じた産経新聞をはじめとするフジサンケイグループだろう。同社のデスククラスの記者はこう語る。
「ウチと安倍総理の関係がいいのは、憲法改正、靖国参拝、慰安婦問題などでの政治的方向性が一致していることが根っこにある。もうひとつは海外では中国や韓国、国内では朝日新聞など“共通の敵”の存在。安倍首相がそれらの仮想敵を攻撃すれば、ウチも応援する論陣を張ることになる。さらに安倍総理といつでも携帯電話で連絡が取れる複数の側近記者の存在も大きい」
その1人が同紙の阿比留瑠比・編集委員だ。署名コラムで安倍首相と祖父の岸信介・元首相の憲法改正への姿勢を比較し、〈そっくりだと感じた。違うのは岸氏は安保条約改定に際して衆院を解散して国民に信を問うべきだったと後悔したが、安倍首相は今回、衆院選を断行して勝った点だ。祖父を超えられるか〉(阿比留瑠比の極言御免、1月8日付)と持ち上げるなど贔屓の引き倒しともいえる論陣を張ってきた。