投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、3月9日~3月13日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、「忍耐強く」という文言が削除される可能性が高まっていること、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産の投資増額により強含みに推移すると予想される。
リスクシナリオとしては、米国議会で通貨安に伴う損害賠償請求を企業に認める法案が審議されていること、環太平洋経済連携協定(TPP)などの通商協定に為替条項を付随する動きが強まっていること、3月期末に向けた本邦機関投資家のリパトリ(外貨建て資産売却・円買い)、ギリシャの債務問題への警戒感、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化などに警戒することになる。
【米国2月労働市場情勢指数(LMCI)】(9日)
米国連邦準備理事会(FRB)が公表する19の雇用関連指標から構成される労働市場情勢指数が1月から改善していた場合は、FRBの利上げ時期が早まる可能性が高まることになる。大幅に悪化していた場合は、利上げ時期の先送り観測を高めることになる。
【米国1月の求人労働異動調査(JOLT)】(10日)
イエレンFRB議長が「イエレン・ダッシュボード」で注視している9つの雇用関連指標の内、4つが発表される。イエレンFRB議長は、利上げ開始の条件として、9つの雇用関連指標がリセッション(景気後退)前の水準を回復することを挙げており、直近の数字は、3つしか回復していないことで要注目か。
【米国2月小売売上高】(12日)
米国の2月の小売売上高は、前月比+0.4%と予想され、1月の-0.8%からの改善が見込まれている。米国の1-3月期の国内総生産(GDP)の算出に使用される「自動車ディーラー、ガソリンスタンド、建材などを除く売上高」を、1月の修正分と合わせて注目することになる。悪天候要因などで、ネガティブ・サプライズとなった場合は、米国1-3月期国内総生産(GDP)への警戒感が高まることでドル売り要因となる。
【米国議会のドル高・円安抑制】
米国議会では、通貨安に伴う損害賠償請求を企業に認める法案が審議されており、TPPなどの通商協定に為替条項を付随する動きが強まっていることで、要警戒となる。
【安倍政権の円安抑制】
安倍政権は、対内的には、4月の統一地方選挙に向けて、原材料輸入価格の高騰に苦しむ地方中小企業への配慮から、円安を牽制するスタンスを強めている。また、対外的には、TPP交渉が難航していることで、米国製造業、議会への配慮から、ドル高・円安を抑制するスタンスを強めている。
3月9日-13日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。