通学路の見守りボランティアや「子ども110番の家」などの活動が盛んに行われているにも関わらず、子どもが標的にされた痛ましい事件は後を絶たない。13歳未満の子どもが被害者となった刑法犯の認知件数は、平成16年以降減少傾向にあったが、平成25年には2万6939件と、前年より1327件増加した(平成26年警察白書より)。こうした背景から、昨今は居場所確認ができるキッズケータイなど、見守り機能を強化した防犯グッズにも注目が集まっている。
「防犯グッズを持たせていても、使い方に慣れていなければ、いざと言う時に体や頭は動いてくれません。親子で一緒に、『何が危ないか』『危ない時には何をするか』を具体的に見定めて、普段からトレーニングしておくことが大切です」
こう話すのは子どもの安全対策の専門家、ステップ総合研究所・代表の清永奈穂さん。最近の子どもを対象にした犯罪には、子どもが不安を感じる言葉や不安を感じさせる態度で話かける「声かけ」、子どもを現在地から移動させる「連れ回し」、3km以上離れたところに連れて行く「連れ去り」、「誘拐」という4つの段階があるという。
「かつては『声かけ』をするのは比較的近隣に住む人が多く、『連れ回し』や『連れ去り』の犯人は、足がつかないように遠くからやってくる傾向がありました。ところが最近は、子どもに『声かけ』するために遠方から来る人もいますし、神戸市長田区や札幌市、和歌山市の事件のように、重大犯罪の犯人がごく近くにいた、というケースもあります。
インターネットの普及によって犯人はどこに住んでいても、ターゲットとなる子どもを簡単に見つけられるようになり、地図アプリを使えば見知らぬ土地についても、土地勘を養ったり、逃走経路を調べたりすることも容易です。これまでのように『誘拐犯は近所の人間ではない』などと、犯罪の内容から犯人を推定することができにくくなっているのです。
そして『連れ去り』の件数が、昨年9年ぶりに年間100件を超えました。これだけ犯罪が多発している世の中ですから、親も『自分の子どもが危ない』とわかっています。しかしその一方で、『うちの子は大丈夫』と、無闇に安心している部分もあります。その2つのギャップを埋めるために大切なのが、“体験型の安全プログラム”です」(清永さん)
体験型安全プログラムのトレーニングメニューのひとつには、歩いたり、人とすれ違ったりなど、日常の行動から「安全基礎体力」の確認をすることがスタート。
「さまざまな研究から、犯罪者は20m逃げられたら諦める傾向があることがわかっています。その距離を逃げ切るために、20mを全力でダッシュする練習をします。また、追いつかれないためには、手ぶらの時は犯人の4m手前から、ランドセルなどを持っている時は6m手前から走り出すこともポイントです。
防犯ブザーを使う練習では、実際に鳴らしてみるのはもちろん、いざという時に鳴らせる位置につけているかどうかもチェックします。また、ひもを引きながら逃げる、もし鳴らなくても、諦めずに大声を出すことも指導します」(清永さん)