異動・転勤が多い春は気をつかうことが多く、ストレスもたまりがち。1都3県の上場企業に勤務する男女800人を対象としたアンケート調査で「ストレスがある」と答えた人は674名。そのうち約6割が「胃が痛くなる」(25.7%)「下痢がちになる」(14.5%)「胃にガスがたまりやすくなる」(14.4%)などトラブルを抱えていると分かった(2015年ヤクルト調べ)。この胃腸トラブル、病院へ行っても解決できない経験をした人も多いのではないだろうか。
それというのも、検査をしても炎症や潰瘍などの原因が見つからず、辛いのに打つ手がないことが多かったからだ。ところが2013年、そんな胃の症状が「機能性ディスペプシア」という保険病名を獲得。治療したくてもできなかったジレンマは解消されつつあると、東邦大学医療センター・大森病院総合診療科の瓜田純久教授は話す。
「機能性ディスペプシアとは、症状の原因となる異常が見つからないのに、胃の痛みや胃もたれなどの辛い症状が慢性的に続く状態です。患者数は1500~3000万人とも推計されています。おもな症状に、『食後のもたれ感』、『食事を始めてすぐに胃が一杯になる感じ』や、みぞおちの痛み、焼けるような感じがあります。こうした症状はQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の低下につながりますから、積極的に治療ができるようになったのは、喜ばしいことと考えています」
しかしその一方で、治療をする上での悩みもある。
「2014年に、機能性ディスペプシアの治療ガイドラインができました。しかし、もともと器質的な異常の見られない病気ですし、慢性的に症状が続くことも多々あります。患者さんの負担を軽減するためにも、さらに医療費の増大を抑えるためにも、できる限り薬を使わず、安全性の高い食品で症状を改善することができれば、というのが臨床医としての願いでした」(同前)
そこで瓜田教授らは、善玉菌として知られるビフィズス菌のうち、「B.ビフィダム Y株」を使っての研究を始めた。