中国が主導する新たな国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」にASEAN諸国やインド、韓国、EU各国などが参加を表明し、発足に向けた準備が大詰めを迎えている。ASEANをはじめとするアジア諸国は、立ち遅れたインフラ整備を支援するという中国の提案に乗り、その巨大なマネーを狙って中国にすり寄った。
ドイツ、フランスなどEU各国は、AIIBによって掘り起こされる巨大なインフラ建設関連ビジネスを自国企業の業績拡大に活かすという実利のために中国に取り込まれた。
その中で、日本が不参加方針を貫けばどうなるか。キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之・研究主幹はこう指摘する。
「アジア諸国でのインフラ関連ビジネスに大きな期待をかけている多くの日本企業の立場が圧倒的に不利になるのは明らかです。すでにASEAN各国が参加を表明している以上、日本が参加しないのは大きなリスクとなりうる」
日本はかつて、ODA(政府開発援助)などにより、アジア諸国に橋や道路、港湾の整備を進めて支援してきた。そのことが日本企業のアジア進出への足掛かりになった。
安倍晋三政権はアジア諸国に新幹線や原発の売り込みを図っている。たとえば、高速鉄道計画を発表しているインドには、1兆円規模とされる建設工事を落札するため、官民一体となった売り込み攻勢をかけている。
さらに2020年までに原発輸出を2兆円に増やす方針を「成長戦略」として掲げ、ベトナムなどに売り込んでいる。日本がAIIBに参加しないとなれば、そうしたアジア諸国のインフラ需要を取り込めなくなる可能性がある。