発売わずか2日で年間販売目標の出荷量(100万ケース=1ケースは420ml×24本換算)を超え、一時的に販売休止に追い込まれたサントリー食品インターナショナルの炭酸飲料「レモンジーナ」。
同商品はサントリーが仏飲料大手(オランジーナ・シュウェップス)を買収して2009年に自社ブランドに加えたオレンジ炭酸飲料「オランジーナ」の姉妹品。オランジーナも発売1か月で年間200万ケースを超え、3か月後には400万ケースに到達するほどの人気だった。
当時のインパクトを考えたら、今回、レモンジーナの投入はもう少し強気な製造・販売計画を立ててもよかったのではないか。飲料総研の宮下和浩取締役はこんな見方をする。
「発売前から『試しに飲んでみたい』と話題にはなっていましたが、サントリーもまさかここまで反響があるとは思わなかったはず。今年に入ってから他社の炭酸新商品も続々と発売されていたため、オランジーナと一緒に売り場の『棚』を確保できる保証がなかったこともあるでしょう」
確かに、コンビニやスーパーの飲料コーナーをのぞいてみると、炭酸飲料のニューフェイスが目立つ。「三ツ矢フルーツサイダー〈青りんご・グレープ〉」(アサヒ飲料)や、「メッツ〈オレンジ・グレープ〉」、「トロピカーナ スパークリングタイム〈チェリー・ピーチ〉」(ともにキリンビバレッジ)など、ライバル商品がひしめいている。
そこに、コカ・コーラやファンタ、ペプシといった年間1000万ケース以上を売るメジャーブランドは外せないとなると、“棚取り競争”が熾烈を極めるのも当然だ。裏を返せば、レモンジーナの販売休止は、小売店の棚を奪取したサントリーの営業攻勢の賜物といえるだろう。
それにしても、今なぜ炭酸ブームが起きているのか。
「お茶や水なら家庭でも飲めますが、炭酸だけは作れないので節約志向が強いときでも需要が落ち込みにくい傾向があります。リーマンショック後も炭酸市場だけは唯一伸びましたしね。いまは消費増税の影響が残っているため、いい流れが続いているのです」(前出・宮下氏)
だが、一昔前の炭酸飲料とはトレンドが変わりつつある。売れ筋のキーワードは、ずばり“健康炭酸”だ。宮下氏が続ける。
「炭酸の刺激の強さよりも、健康感がどれだけ得られるかがヒットのカギ。そのため、各社とも果汁入りのフレーバーを意識したり、無果汁でもカロリーオフを前面に打ち出したりしながら、従来の子供向けではなく大人にも支持される炭酸飲料づくりをしています。
オランジーナやレモンジーナも果実の皮から抽出したエキスを加え、自然な苦味を出しています。そのため、まず大人のファンを増やし、次第に子供にも愛飲されるという消費の流れができました」