4月の新入学や進級にあわせスマートフォンを購入する家庭が多いが、ウィルスや情報漏えいなどの対策を何もしないまま子供に与えていないだろうか。ガラケーが主流の時代には定番だったフィルタリングサービスだが、2012年をピークに利用数は100万件以上減少し、とくにスマホでの利用率は5割に満たない。危うさが増しているのに、対策がとられることが減っている。たとえば「LINEが使えなくなる」などのフィルタリングへの誤った認識が利用を遠ざけているようだが、それは事実に反する。
「フィルタリングにはアプリの使用を制限する機能がありますが、保護者がカスタマイズすれば使えるようになります。何でも禁止するのではなく、保護者とお子さんの間で、そのアプリはどんなことができるのか、なぜ使いたいのかといったことを話し合って理解を深めたうえで使ってください。また、LINEは3月末日にEMA認定を取得しています」(総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課・橋本桂樹さん)
EMA認定とは、一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構が実施している運用管理体制認定制度のこと。この認定を受けたサイトやアプリは、各キャリアが提供するフィルタリングからあらかじめ解除される。この認定をLINEのAndroid版とWindows Phone版が3月31日に取得し、iPhone版などでも同様の認定取得を目指している。LINE以外にもニコニコ動画やGREE、モバゲー、魔法のiらんどなどが同じ認定を受けている。
LINEアプリのEMA認定取得によって言いわけがひとつ消えた。これでフィルタリングの利用率は改善するだろうか。しかし、現実は厳しそうだ。スマホに関連する物事が複雑になりすぎているからだ。
高校生の息子がスマホを使っているという50代の団体職員男性に、フィルタリングを設定しているかと尋ねたところ、「どうだったっけ?」と首をかしげていた。その後、息子にきいたところ何も設定していないことが判明し「何を見ているんだか」とため息をつきながら言う。
「たぶん、スマホを買ったときに窓口で説明はされていると思います。でも、長々と説明されたなとしか思い出せない。まず料金体系の説明があって、使用容量に通話時間、オプションの話なんて、もうわけがわからないですよ。一番最初に話してくれれば、フィルタリングのことも覚えていたかもしれないですけどね」
彼が特別に無関心な保護者というわけではない。多くの親が似たような状況だ。総務省を中心に関係各府省庁・関係事業者等と連携、協力して、フィルタリングの推進や青少年・保護者等のリテラシー向上の取組を集中的に行う「春のあんしんネット・新学期一斉行動」を昨年に続き今年も2月から実施している。