「骨の健康を保つ○○」「目の健康に良い○○」……。4月から新たに機能性表示食品制度が創設されたことにより、今後、体の特定部位に“効く”とうたう食品やサプリメントの新商品が巷に溢れることになる。
しかし、「かえって消費者の混乱を招くばかりで、国民の健康にはつながらない」(消費者団体)と警鐘を鳴らす向きも少なくない。安倍政権の成長戦略を担う制度としても期待されているが、前途多難な導入となった。
そもそも機能性表示食品は国の審査を受けなくていい「届け出制」のため、表示内容の信ぴょう性がどこまで保たれるのか疑問が残る。ジャーナリストの小泉深氏が解説する。
「機能性表示食品を販売するためには、60日前までに含まれる成分が体のどの部分に効くのかを証明するための研究論文などを消費者庁に提出する必要があります。
〈体に有効な(機能)成分が特定されていること〉〈なぜ有効なのかが判明していること〉〈効果的な量が分かっていること〉の3つが揃っていることが前提条件です」
とはいえ、国の審査や許可が必要な特定保健用食品(トクホ)や、国の許可は不要な代わりにビタミンやミネラルなど栄養素に限り表示が認められている栄養機能食品ほど、研究データに厳しいクリア基準が設けられているわけではない。
「複数の査読済み論文を用いる〈研究レビュー〉は製品メーカーだけでなく、外部機関が行ってもいいことになっている。これまでヒトを対象にした臨床試験の提出を求められ、許可が下りるまで3~4年、申請準備に1億円以上もかかっていたトクホに比べたら販売の機会ロスも防げる」(大手食品メーカー幹部)
そうした参入障壁の低さも手伝って、少しでも健康機能をうたって商品の売り上げを伸ばしたい企業や団体は、こぞって申請に意欲を燃やしているという。
4月16日まで消費者庁には112件もの届け出があったが、記載不備により現在のところ受理されたのはライオン、キューピー、キリンビバレッジなど7企業8件のみ。果物や野菜などの生鮮食品も申請できるため、今後は農協など農家の産物も出てくるはずだ。