お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(34才)による初の本格小説『火花』が発行35万部の大ヒットとなっている。
芥川賞受賞の呼び声も高い『火花』は、主人公の売れない芸人・徳永と、その徳永が「師匠」と慕う先輩芸人・神谷との交友の中から、「笑いとは」「人間とは」といったテーマに挑んだ純文学だ。又吉は自身の体験をオーバーラップさせながら、芸人の厳しくも切ない世界を描いている。
又吉の自伝的要素も強い『火花』。徳永のモデルが又吉だとしたら、神谷のモデルというべき存在は、又吉が「師匠」と呼ぶ先輩芸人であるお笑いコンビ・烏龍パークの橋本武志(38才)だ。『火花』では、神谷は元不良の大林とお笑いコンビ「あほんだら」を結成しているが、橋本の相方である加藤康雄(39才)も実際に元ヤンキー。「あほんだら」と「烏龍パーク」の共通点はかなり多いのだ。
そんな烏龍パークの2人に、又吉との関係について聞いた。まず、出会いはどういうものだったのだろうか。
「当時、北海道の小樽に吉本の劇場があって、大阪からぼくらと東京から又吉の前のコンビ(線香花火)が2か月弱くらい派遣されてたんですよ。そこが最初でしたね。ぼくも結構人見知りで、行った初日に“最悪やなあ”って思いながらただただ海を眺めてたら、又吉も10メートルくらい離れたところで海を見てて。まあ、そこでは話しかけなかったんですけどね」(橋本)
人見知りをする先輩後輩は、劇場での時間をともにするなかで、徐々に打ち解けていったという。
「そこから2年くらい経ってからだと思うんですけど、ぼくらが東京に出てきた後、又吉が“師匠って呼んでいいですか”って言い出したんですよ。まあ、そういうボケなのかなって思ってたら、次に会ったときから、ちょっとずつ“橋本さん”って呼んでたのが、マジで“師匠”って呼び始めて、最終的には舞台上でもそう呼ぶようになって。さすがにちょっと恥ずかしいですね」(橋本)