就活生はどのように企業を選べばいいのだろうか。思い込み、勘違いはしていないか。千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏が実例と企業選びのコツを紹介する。
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「いつやるの?今でしょ!」
予備校・東進ハイスクールの現代文の名物講師、林修先生の言葉ですね。2013年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞も受賞しました。この年は、この他に、「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」も年間大賞に選ばれましたね。どれも今、言うと、少し恥ずかしいですが……。
今回は、就活に関連して「今、その企業に行くべきなのか?行っていいのか?」「これから、その業界・企業で何が起こりそうなのか?」ということについて考えてみたいと思います。「一刻も早く内定が欲しい」と思うがゆえに、このことがあまりに無視されているのではないかと思うわけです。
最初に言っておきますが、これは答のない話ではあります。複数のエピソード、視点を提示しつつ、徒然なるままに書き綴ることにしましょう。
■「そして、みんな同じ銀行になった」という話
「俺、一勧(第一勧業銀行)に行くことにした。富士(銀行)と迷ったけど、やっぱり行風が合っているな、って」
「俺も迷ったけど、結局、富士(銀行)にした。絶対にウチにきてくれって他の銀行にも口説かれたけどね」
1997年に社会に出た私。学内ではよくこんな会話を聞いたものでした。結局、その後、同じ銀行(合併してみずほ銀行)になったのですけどね……。今の大学生は、おそらく企業説明会で初めて知る事実かもしれませんが。
その頃から、「金融機関は再編が起こるだろう」ということは言われていましたが、これほど早く再編が進むとは思いませんでした。当時「都市銀行(通称都銀)」と呼ばれていた銀行は3メガバンク+αになりました。都市銀行のひとつだった北海道拓殖銀行は経営破綻しました。
銀行に限らず、この約20年で業界の再編は進みましたよね。合併、経営統合などの他にも、事業の売却、切り離しが行われた例などもありますよね。
同じ会社で定年まで勤めたいという志向の学生はここ数年、増加傾向ですが、別に早期離職しなくても、気づいたら企業が変化していったということがあり得るということを覚えておいてください。
■そのベンチャー企業は、いまどれくらいベンチャーっぽいのか?
「先生、俺、ベンチャーに行きます。リクルートに行きます!」
「お前、バカか。とっくに大企業だろ」
大学時代、履修していた講義でお世話になった経営学者米倉誠一郎先生に挨拶に言った時、私はそう言われました。懐かしいです。先生の言っていることはいちいち正しく、当時のリクルートは創業40年近くでしたし、従業員は3000名前後、営業利益も1000億円を超えていました(1兆円の借金があったので、その返済にまわされていたのですが)。私は、採用担当者や社員の話、イメージから「俺はベンチャーに行くんだ」と信じていたわけですが、冷静に数字を見るとベンチャーなワケがないのは明らかです。
このような誤解をする学生をよく見受けます。「ベンチャー」という言葉に踊らされて、実態を見ていないわけです。「ベンチャー」と言っても、規模、資本構成、歴史によって全然違うわけです。
ただ、採用広報上はもうかなりの規模になっていて歴史のある企業でも「ベンチャー」だと訴求するわけです。当然、創業して間もないころ、上場する前、その後では企業の状態も、任される仕事も違うわけです。当然、仕事の醍醐味も変わります。ベンチャーだと思い、大企業と違って、スピード感があって、大きな仕事を任されると思ったら、普通の大企業とあまり変わらなくてガッカリ、ということがよく起こるわけです(この大企業はスピードが遅い、任される仕事が小さいというのも大いなる誤解ですが)。
そのベンチャーはどんなベンチャーなのかという視点を持って置きたいところです。