企業のトップ人事で若返りを図るケースは多いが、意外にも社長の平均年齢は上がり続けている。
帝国データバンクが全国114万4167社を対象に調査した社長の平均年齢は、2014年末時点で59.0歳となり、1990年以降で過去最高齢を更新した。特に不動産業や製造業で70~80代の社長も珍しくないという。
社長の高齢化が止まらない要因として、人材難に喘ぐ地方の中小企業などで事業承継が思うように進んでいないことが挙げられるが、上場企業でも名物社長の長期政権が続いている企業はある。サンリオの辻信太郎社長(87)、カシオ計算機の樫尾和雄社長(86)などだ。
そして、名物社長というより「怪物社長」の域に達していると言われているのが、3兆円の売上高を誇る軽自動車メーカー、スズキの会長兼社長である鈴木修氏。今年1月で85歳になった鈴木氏は、5月11日の決算会見で経営陣の高齢化に触れ、〈私が一番先に辞めればいいが、そうもいかない〉と、さらなる“続投宣言”をしてみせた。
「6年ぶりの減益と決算数字は振るわなかったのに、その後スズキの株価が上がったのは、鈴木氏の健在ぶりに投資家が安心したから。それだけスズキは良くも悪くも『鈴木修』という経営者のブランドに左右される会社だということ」(自動車アナリスト)
鈴木氏は同会見で、今後5年の間に順次、年長役員の若返りをすると公言。すでに田村実副社長(66)と相澤直樹取締役専務役員(63)の退任が決まっている。この人事刷新を予定通りに行うとすれば、少なくとも鈴木氏は90歳まで第一線で経営の陣頭指揮をとる可能性がある。
しかし、いち早くワンマン体制から脱却したい意思の表れ――と捉える向きもある。ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「鈴木氏は長男の鈴木俊宏副社長(56)を後継者にすることを決めていて、2011年に俊宏氏を含め4人を副社長に選任。年長の役員たちが息子を守りながら経営する『トロイカ体制』を試してきましたが、思い通りにいかなかったのでしょう。
そこで、若番頭に入れ替えて俊宏氏がやりやすい体制にしてから自分は退こうという“親心”が芽生えているのだと思います」