「途上国へのワクチン支援になる」というキャッチコピーで広がったペットボトルのキャップを集める活動は、小中学校や幼稚園などが参加する国民的運動になった。
ところが、キャップを集めるNPO法人「エコキャップ推進協会(エコ推)」が1年以上にわたってワクチン寄付をしていなかったことが発覚し、大騒動になっている。
エコ推は昨期(2013年9月~2014年8月)、約9000万円の収入があったにもかかわらず、JCV(世界の子どもにワクチンを日本委員会)に1円も寄付していなかったことを朝日新聞が報じた。今期もJCVに寄付はなく、「ワクチン寄付はなかった」と新聞・テレビが大きく報じ、インターネットなどでは「国民の善意をネコババした」と大批判を浴びた。
怒りの声が巻き起こるなか、渦中のエコ推の矢部信司・理事長が取材に応じた。
最大の疑問は「9000万円はどこに消えたのか」だ。矢部氏は1900万円を障害者支援事業に充て、スタッフの人件費に約3900万円かかったなどと説明した。
その他に事務所家賃などの管理費に約3200万円が充てられたという。しかし、エコ推は2010年以降年間4000万円以上を寄付・支援に充ててきた。昨期の障害者支援が1900万円しかないのは不自然といわざるを得ない。
「恥ずかしいことに昨期はトラブルもあった。エコキャップ配送キット(キャップ回収用の専用袋)のオペレーションを任せていた企業が破綻し、その損失の穴埋めに2000万円以上が必要となり、後処理のために人件費も増えてしまった。損失分は弁護士を通じて回収を試みています。回収できればワクチン代を寄付できるので、JCVには寄付を待ってくれるようお願いをしていました」(矢部氏)
2013年8月までに、エコ推は計1億2460万円をJCVに寄付してきたが、JCV側は矢部氏の説明に納得しなかった。JCVは昨年12月、寄付が1年以上ない理由を問う内容証明をエコ推に送り、それをHPで公開した。JCVの担当者はこう説明する。
「キャップを集めてくださっている方々は、途上国のワクチンになると思って協力している。JCVへのワクチン寄付を謳ってキャップを集め、売却代金を得た以上、エコ推が“収益をどこに寄付しようが自由だ”というのは筋違いでしょう」(募金開発グループ)
もっともな指摘だが、矢部氏はJCVにも問題はあると反論する。